表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/155

94

「はいっ!」


 祷にプレゼンターとして呼ばれたわたしは、明瞭さを意識し滑舌良く大きな声で返事をした。つもりだったが、少し上擦ってしまった。


「あ、改めまして、姫田願子です。今回の企画について、ご説明させていただきます」


 プレゼンの内容は事前に祷のチェックを受けている。祷を相手に練習もした。台本は資料に記載されている。飛んでしまうということはない。落ち着いて読み進めれば良いのだ。

 できる。

 できるはず。大丈夫。


 ひとつゆっくりと息を吸い、吐く。


「この企画は、『阿波ゼルコーバ』のファン感謝祭に来られるファンの方を対象に、感謝祭内のパフォーマンスにて、選手の普段見られない姿などを楽しんでいただくことで、ファン感謝祭の効果を高めることを目的としています」


 安達さんは資料を見ながら頷いている。

 聴き方の印象が良く、話し手をリラックスさせてくれる。

「資料を一ページ進めてください」というと、素直にページをめくってくれた。

 祷たちも同様にページを捲る。紙が捲れる音が止まるのを待ち、先に進めた。


 資料には企画の効果を端的に表した四つのキーワードがシンプルに並べられていた。


「ファン満足度を高めることで得られる具体的な効果は四つです。

ファンのチームへの帰属意識を高める。

満足したファンによる発信による二次的、三次的な広報効果とブランディング効果。

イベント自体の成功による次回以降のイベントへの期待値を高め、商業的成功がよりしやすくなる土台を作る効果。イベント自体の経費減と収益増に繋がります」


 キーワードのみの資料を指しながら、口頭の説明で補う。


 またページを巡り、具体的な施策についての説明へと入っていく。


 サッカーやサッカー選手と親和性のあるサンバという文化を取り入れること。

 サンバはダンス、ダンサー、音楽、歌、リズム、派手、賑やか、楽しい、といった属性を持つ。

 メインとなるダンサーとダンスを用いたコンテンツのほか、既存コンテンツの盛り上げ役などを担える点でのコストパフォーマンスの高さも訴えた提案をひととおり伝えた。

 次いで予算観と経済効果。予算観の絡みで提案内容の規模も伝える。そこには地元のサンバチームとの連携についての記載と説明もあった。

 これは単にパフォーマンスの規模と費用に関する価値の提案だけではなく、地元貢献という地域に根付く必要のあるサッカーのクラブチームが背負っている義務と責任の一部を担える価値を提供できることも意味していた。

 ニュースソースとしての価値もあり、その方面でも二次的な広報効果が期待できる。


 イベント自体が楽しく、選手が楽しめファンが盛り上がれる。その結果チームの収益や広報、地域貢献に寄与できるというのがこの企画の本筋だ。

 チームにもたらすことのできるメリットは、スポンサーである姫田グループへのイメージ向上の効果も期待できる。

 創業の地である地元貢献のほか、ファンがスポンサーに好印象を持つことは広報的な価値のほか、チーム、ファン、スポンサーを一枚岩にすることで得られる底堅い強さをもたらす。

 また、ファンの数やファンからの収益がチームにもたらされれば、自ずとチームの強化に繋がり、チームが強くなればなるほどスポンサーへの広報的な還元や直接的な収益増が見込める。



 安達さんの反応は悪くはない。

 但し、聴き役としての配慮に長けた方だ。見た目の表情やリアクションが本音を語っているとは限らない。


「楽しい」ことが大前提の企画である。

 続く実演にて、その魅力を直接体感してもらわなくてはならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ