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その日のミーティングでは、計画についてハルさんから発表があった。
日にちと場所は決まっている。イベントが獲れるかはまだわからないが、遠方のイベントだから、早めに予定を調整するようにと発信があった。
計画の発案者でプロデューサー的な立ち位置で計画を仕切っている祷が呼ばれ、経緯や進捗、イベントの内容(『ソルエス』の立ち位置や実施することなど)について話していた。
澱みなく話す祷。聞き取りやすいしわかりやすい。
やっぱり祷はすごいなぁ、なんて思いながらぼんやり眺めていたら、わたしの名前が突然会場に響いた。
みんなわたしを見ている。
え? な、なに?
「がんちゃん?
今回の企画の内容を考えて、今週のプレゼンではプレゼンターを務めるがんちゃんから、みんなにひと言言ってもらって良い?
意気込みとか、なんでも」
そんなの聞いてない!
あぁ、みんな待ってる。
「あ、はいっ」
とにかく何か言わなきゃ終わらない。
とりあえず勢いよく立ち上がった。
「ええと、イベントのない時期に何かできないかって祷が考えてくれて、ハルさんに相談して、出演の機会を自ら獲りにいこうというきっかけで始まった計画です。
もし獲れたら、お祭りやショーなどのパレードやステージとは異なるイベントになると思います。遠くのサンビスタと一緒に演出する珍しい機会になると思いますので、もし獲れたら出られる方は出て、楽しんでもらえたら嬉しいです。
そうなるように、今週のプレゼンがんばります!」
場が温かい拍手に包まれた。
恐縮しつつ左右にぺこぺこお辞儀しつつ座る。
なんとかそれっぽいこと言えた。
隣に座っていた柊が腕をつついてきた。
「がんちゃんすごい! スピーチ上手だねぇ。格好良かったよ」
そうかなぁ。一生懸命言おうとしすぎてて、辿々しかった気がする。
祷みたいにすらすらと言葉が出てきたら本当に格好良いのだろうけど。
だけど柊は感心した様子で、
「これならプレゼンいけそうだよね!」
と笑顔を見せた。
柊が期待してくれている。がんばろう!
いや、拍手してくれたメンバーのみんな。遠いしタイミングが合わず参加できないひともいるだろうけど、みんなにとっても楽しんでもらえる機会になるはずだ。
プレゼンの後の実演で踊る穂積さんと柊に思いっきり踊ってもらうためにも、前座としての役割もきっちり果たさないと。
となると、内容だけじゃなくてプレゼンの仕方も考えないと。だんだんと盛り上がる構成にして、そのままシームレスにパフォーマンスにいけたら良いな。
あとで祷に相談してみよう。