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 言葉も出ないわたしを祷はにこにこと見つめていた。


「正確には、チームがんこだね」


 わたしを中心にしたプロジェクトチームで、案件をとりにいくと言う。


 我があだ名ながら、その名が冠されているだけでなんて力の抜けるチーム名だ。

 などと思う余力はあるが、まだ言葉は出せない。ようやく呼吸をすることを思い出した段階だ。


「私はもちろんサポートするし、ほづみも手伝ってくれるって」


 この前の打ち合わせは、そういうことか。

 ようやく繋がったが、結論のインパクトが大きすぎてもはや新たな驚きはない。


「ほづみからひいにも伝えてくれるから、きっとひいも加わってくれる。

あと、最近知ったんだけど私が入ってるインカレの企業サークル、ウリが学生の頃立ち上げたんだって」

 びっくりだよねー。世間て狭い。などとたいして驚いた風でもなく言っている。


 ウリさんは『ソルエス』で、『マランドロ』というスタイルで踊る男性ダンサーだ。

 マランドロは白い上下のスーツにパナマハットを被ったスタイリッシュで格好良い感じで踊る。

『ソルエス』には代表のハルさんの他にふたり、計三名のマランドロがいた。ウリさんはそのうちのひとりだ。

 柔和で品の良い雰囲気の見た目に、まだ三十をいくつか過ぎたくらいの若さで、ベンチャー企業の代表という一面を持っている。


「ウリも驚いてたよ。それでね、『後輩のためなら支援惜しんでちゃいられないよね』っていってくれて、会社の社員にも同じインカレ出身のひともいるらしくて、『先輩連合』をつくってバックアップするって約束してくれたんだ」


 あまりあちこち巻き込むつもりはなく、祷の見立てでは、この体制で勝算は充分にあると踏んでいると言っていた。


 その計画のコアはわたしなんだよね?

 なんの準備も実感もないのに、どうしろというのだろう。



 その疑問が、不安が、顔に出ていたのか、祷が具体的な説明を始めた。


 基本的には仕事を持っていない学生が中心に動く。

 とにかくわたしの想いと希望を軸にして骨子を作る。


 だからまず、わたしがどうしたいのか、そのためになにができるのか、相手にどんな価値を与えられるのかを考えなくてはならない。



 それを計画書にまとめるのは祷がやってくれる。

 ウリさんの会社はシステムコンサルタントが主業務だけど、情報に関するあらゆるサービスを提供しているらしい。『先輩連合』で提案の裏付けになるような情報や、提案する際に役に立ちそうな情報の収集を手伝ってくれるそうだ。

 穂積さんは集まったデータをまとめたり、補足資料をつくったりする役を担ってくれたようだが、真の役割はそこではない。


 祷はプレゼンの際、その場で実演もする腹づもりのようだ。


 祷とわたしがスルドを叩き、その音で穂積さんと柊が踊って、サンバの魅力を体感としても伝える二段構えでいくのだと息巻いている。更に、サンバの奥深さを伝えるために誰もが知っている曲をサンバアレンジしたものも披露するようだ。メロディは祷が奏でるらしい。てことは、スルドわたしだけ?


 この前の相談事の大枠はこの件に関してだったらしい。



 嘘でしょ?

 わたしが提案の大元を考えて、本番でわたしがプレゼンして、その後スルド叩くの?


 ただでさえ能力の限界を超えている案件だと思う。

 更にシビアな判断をしなくてはならない企業の担当者相手にプレゼンして、スルドもやるなんて緊張でどうにかなってしまうよ!





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