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 営業をかける。

 言葉としては簡単だけど、それは何かを販売して利益を得ている多くの一般企業が専門の部門を用意して行なっている業務だ。

 趣味のサークルでそれを行うのはいうほど簡単ではないと思えた。

 実際、代表のハルさんも、いずれはそういう動きをしていきたいと話していたことがあったが、今は手が回らず、ホームページなどを工夫して問い合わせは多く入るように試行錯誤をしているものの、積極的に獲得しに行くような段階にはまだ入れずにいた。


 でも、祷は起業系のインカレに入っているし、学祭などのイベント立案の実行委員もやっていると言っていた。結構大掛かりなイベントなんかも立ち上げていて、企業にスポンサーになってもらったりしているらしい。

 祷なら、営業だってプレゼンだってうまくやれそうな気がした。


「ハルにはあらかじめ相談はしていて、許可はもらったんだ」




 サンバの業界は特殊な事情がある。


 競技人口はバレエやヒップホップなどのメジャーなダンス、またはポップスやロックなどのメジャーな音楽に比べれば少ない。

 それを教える教室や、楽しむサークルなどがどこにでもあると言ったものでもない。


『ソルエス』のようなサンバチームを『エスコーラ』や『ブロコ』と呼ぶ。

 サンバの様式を満たしているチームが『エスコーラ』で、サンバを楽しむことを目的とした集団が『ブロコ』を名乗る。

 エスコーラにしてもブロコにしても、国内に無数に存在しているとまでは言い難く、大体が地域に密着した活動をしていた。

『ソルエス』も、近隣地域のお祭りなどのイベントに呼ばれることが多い。


 どのチームにしても、イベントの機会は貴重だ。

 だからと言って、どこかのチームがあまりにも安い金額で受けてしまうと、相場が崩れてしまう。また、「サンバは安く呼べるんだ」なんて印象が蔓延してしまっては文化としても良くはない。

 なので、サンバ隊一式を呼ぶための相場観が何となく決まっていて、それよりも著しく安く受けてしまってはいけない。


 また、おおよそのチームが地域密着でやっている。

 例えば祭りの出演依頼が来たとしても、その祭りの実施エリアにより紐づいているチームがあれば、主催者や代理店にその情報を伝え、まずはそちらに依頼をしてみてはと提案する。

 別に決まり事があるわけではないが、そのような紳士的な対応を各チームが取ることで、共存しているのだ。



 そういう背景を理解し、場を荒らすようなことはしないという条件で、ハルさんは祷の活動を許してくれたそうだ。

 もちろん、ハルさんとしては嬉しい申し出でもあったので、必要があれば挨拶でもプレゼンでも打ち合わせでも、代表として顔を出すと言ってくれているらしい。それには、責任者として責任を持つという意図も含まれている。




 チームの承認と後援を受けているなら、祷の実力なら何とかしてしまいそうだなと思った。







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