表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/155

74

 ふとした隙間の時間に、出られなくなったイベントのことを思い出して悔しくなる。


 どうせしばらくイベントはない。

 日常生活を全うすると決めたのだ。勉強とバイトを頑張って、忙しくすごして余計なことを考える隙間を無くそう。



 サンバの練習はどうしようか。

 イベントがないからってサボったら実力が落ちてしまう。わたしが一番練習が必要な状況に変わりはないのだから、怪我の反省は活かすとしても練習も頑張らないと。


 キョウさんとはあれ以来なので少し気まずいが、キョウさんはおとなで、なんでもない感じで接してくれるだろう。

 それに甘えちゃダメだ。最初にちゃんと謝って、わたしが本当に言いたかったこと、聴いて欲しかったこと、或いは訊きたかったことについてきちんと話そう。

 そのために、わたしの頭の中身を整理しないと。今のままでは、わたしの奥底がなにを求めていたのか、わたし自身よくわかってない。



 バイト中、そんなことを考えていたら、お客様の来店があった。

 一生懸命やると決めたのに、違うこと考えてちゃダメだよね。気を引き締めないと。




「いらっしゃいませぇ! ......えぇーっ⁉︎」



「がんちゃん、こんばんはー。がんばってるね!」


 マニュアルではご来店の人数を確認しなくてはならないのだが、驚きのあまり止まってしまっていたら、にこやかに店内に入ってきた穂積さんに先を越されてしまった。


 わたしが本当に驚いたのは、穂積さんの予期せぬ来店、


「がんちゃん。おつかれさま」


 だけでなく、傍に祷を伴っていたことだった。


 なんでこのふたりが?

 いつの間に仲良くなったの?

 バテリアとダンサーだからあまり接点ないよね?

 でも妹同士が友だちなんだし、同じチームで同じ年齢なんだし、不思議ではない、か?

 だけど、なんでわたしの働いてる店に?



 なんて内心ではパニクりつつも、とりあえずふたりを席へと案内した。

 わたしも結構対応力が身についてきている気がする。


「ありがとう、がんちゃん。このまま注文しちゃって良いのかな?」


「あ、はい、お決まりでしたら」


 穂積さんの言葉に店員モードで反応する。

 穂積さんは、「そんな畏まらなくて良いのに。って、そういうわけにもいかないのか。仕事中だもんね。身内だからってフランクな対応してるの偉い人に見られたら怒られちゃうよね」と笑っていた。


「実はほづみと打ち合わせたいことがあって、ファミレス行こーってなったの。それで、どうせならがんちゃんのお店に行ってみようと」


 祷も「急に来てごめんね」と言いながらも、穂積さんに負けないくらいの笑顔だ。


 どうせならってなによ。

 打ち合わせるってなんのだろう。


 思いながらもオーダーを受ける。


 ふたりはドリンクバーとそれぞれのパスタのほかに、チョリソーやシュリンプなど思い思いのアペタイザーを注文した。


 けっこう食べるんだ、このふたり。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ