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 祷という錘から離れ、心軽やかになったわたしの高校生活は、しかしながらいわゆる花のJKなどといったものからはまだまだ遠かった。


 別に青春だのリア充だのに憧れていたわけでもなく、姉の影がちらつかないだけでも充分に満足できていたはずだったが、日々をキラキラと送っている友だちを得るにあたり少し物足りなさを感じ始めていた。

 柊は部活にダンスサークルに忙しそうだけど、楽しそうだった。その分勉強はおろそかにしがちで、宿題をやってこなかったり、授業中眠そうにしていたりとするが、そう言う部分も含め、高校生活を謳歌しているように見えた。

 人は慣れるものだ。悪い環境への慣れは耐性(或いは麻痺だったのかもしれないが)を身に付けさせてくれたが、良い環境への慣れは、ありがたかったはずのものが当たり前だと思うようになってしまう。


 わたしの高校生活は、学校へ行き、週三回のバイトをして帰る。


 早く親から離れたいわたしは、できるだけ経済的にも早く自立したかったので、部活には入らずバイトをすることにした。

 週五でも良いというくらいの意欲を見せたが、そこまで人員が不足していたわけではなかったようで、週三日間のシフトが組まれた。

 勉強にバイトに忙しい日々を想像していたわたしだが、思うよりも緩い高校生活を送ることになった。

 バイトが無い日は買い物なり買い食いなり、多少の寄り道くらいはすることはあるが、まあ大概はまっすぐ帰る。

 帰ればそこには祷がいて、両親がいる今までと変わらない生活が待っていることも、せっかくの高校生活が今までと同じ生活に塗りつぶされてしまうとの思いが焦りに変わっている気がした。


 一番の友達の柊は部活ガチ勢で、たまにしか遊べない。

 今更部活に入るのも面倒くさいし、そもそも興味のある部活が無い。

 いっそバイト掛け持ちでもしてみようかとも思ったが、緩さに慣れてしまってちょっとしんどい。

 部活やバイトをしていない友だちもいるにはいる。


 前の席の西山椎奈(にしやましいな)と、後ろの席の尾池瑠夏(びいけるか)とは席が近いと言う理由で休み時間などによく話すようになり、そのまま仲良くなった。


 そういう友だちと遊べば良いのだが、やっぱり較べてしまう。一番の友達はキラキラしているのに、わたしはこなすような日々を送っていて良いのだろうか。



 入学したばかりの頃、名前をネタにした男子にわたしのとった対応を格好良いと言ってくれた柊。わたしはわたしで、その男子にびしっと啖呵を切った柊を、格好良いと思ったのだ。

 日々を溢れんばかりの充実感を以て過ごしているように見える柊と対等に付き合うなら、わたしも何かに真剣に一生懸命向き合いたいなと思うようになっていた。

 そんなことは気にせずとも柊は対等だと言うだろうが、わたしが柊の在り方に憧れたのだ。


 あんな風になりたいと思っていた。


 どうやっても届かない祷と比較されていた諦念の日々には持とうとも思わなかった願望だ。


 同年代の憧れの存在は、比較すれば卑屈になったり自己嫌悪に陥ったりする要素もあるのだろうが、それ以上に、自分を憧れの存在に近づけるため、より良くあろうと発奮させてくれた。


 一体何が違うのだろう?


 周りが勝手に比較してくることと、自分から比較してその差を埋めようと思えたことが異なる点だろうか。

 正解な気がするけど、根本が間違えてる気もする。


 まあ正体はどうでも良いのかも。


 祷と比較されてた日々は辛かったけど、柊のように日々を情熱を持って生きることはやってみたいと、わたしが思っていることが全てで、AとBの違いに不平等や矛盾があったって知ったことでは無い。

 わたしがどう感じているかが大事なのだから。


 


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