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その後、お母さんからは特に何かを問われると言うことはなかった。祷が執りなしてくれたのだろうか。
関わってこないなら、どうでも良いか。
姉に助けてもらってばかりとか、悔しく思う気持ちもあるが、わたしはわたしのやりたいことをやりたいようにやれれば良いのだから、それ以外のことはあまり気にするのやめよう。
それよりも、エンサイオだ。
日曜日のエンサイオは少し早くから始まる。それでも学校が休みだから、最初の方から練習できて嬉しい。平日は学校の状況次第で遅れる場合がある。
今日はキョウさんにもらったスルドを持っていくんだ。
家では練習できなかったけど、自分のスルドと数日一緒に過ごせて、なんだかよりスルドと親密になれた気がした。持ち帰った初日は自分の情けなさに泣いたまま寝てしまう醜態を晒してしまったが。
このスルドとは、多分ずっと一緒にサンバの世界を共に往くのだという予感があった。
わたしの醜いところとかダメなところとか、全部見せていって、相棒みたいになろう。
キョウさんもだけど、楽器奏者のひとたちは、なんとなくそう言う立ち位置で楽器を扱っているように見えた。
スルドを持って帰ってきたときと同様、キョウさんの作ってくれたケースのおかげで移動は楽だった。
それでも、歩く速度はやや遅くなっていて、駅ではエレベーターを待ったりしていたら電車を逃してしまった。
まああまり早く行っても受付が遅れてたら開いてないし、向こうに着いても早く歩けないから今日はゆっくり行こう。
十五分後に来た電車に乗って、目的地へ向かった。
練習場の扉の奥からは、話し声が聞こえた。
既にメンバーが結構集まってるのかな?
みんないるなら、すぐに合わせる練習できるかも。
期待と楽しみに胸を膨らませて扉を開けたわたしの目に、理解のできない光景が飛び込んできた。
「えっ⁉︎ なんでいるの⁉︎」