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 柊の家は『株式会社ウィンドウトリートメント入船(いりふね)』という会社を経営している。

 社名の通り、カーテンやブラインドなど、窓周りのインテリアの施工が主力の事業だ。

 その他壁紙やタイルなども扱える内装業者でもある。


 直接個人向けの販売は行っていないが、法人の取引先を通して個人宅への販売や施工もおこなっている。

 家族経営の会社ながら、職人や法人取引先の専任担当者、販売員、事務員など、何人かの社員を雇っている。

 一職人だった柊のおじいちゃんが立ち上げた会社を、柊のお父さんが引き継ぎ、大きくしたのだそうだ。


 柊の自宅の敷地内には、三台ほど車が停められる駐車場付きに四階建ての社屋、社屋に隣接して工場(コウジョウではなく、コウバと呼んでいる)と倉庫が建てられている。

 それぞれの建物は企業の持ち物としては大きくはないが、自宅とは別にそれらが建てられていて、更に庭と自家用車用の駐車場もあるのだから個人宅の敷地としては広大だ。



「うわぁ」

立派な門構えに思わず感嘆の声が漏れた。


「がんちゃんちもお金持ちでしょ? しかもうちと違って由緒正しい家なんだから、あんまり感心されると恥ずかしい」


 柊は一番の友だちだ。わたしが抱えているささやかな錘は、客観的に見れば思春期の肥大化した被害妄想と評されるのだろうから、これまで誰にも言ったことは無かった。でも、柊には話していた。

 そのときに、お父さんやお母さんの話をしていて、家のことも言ってあった。



 わたしの家を引き合いに出し、照れたように言う柊。

 でも、柊は自分の家のことも、家族のことも好きなのだろうな。

 照れた素振りの中に、少し誇らしさが見えた。たぶん家がお金持ちであることが自慢なのではない。尊敬できる両親が誇らしいのだろう。



 わたしの家もお金持ちの家といえる設えだが、お父さんは高給取りかもしれないけどサラリーマンに過ぎず、規格外の収入があるわけではない。

 お母さんの実家が資産家で、援助を受けられたから立派な家を建てられたが、お母さん自身がたくさんお金を持っているわけでもない。

 立派な家は、わたしたち家族にとって分相応かと問われれば疑問だ。

 一方、柊の両親は、自ら創った仕事で、努力と尽力で稼ぎ、その稼ぎを使って会社を大きくした。

 その結果としての広い敷地や豪邸なのだ。

 実力が伴ったお金持ちは、なんだか頼もしいと思った。うちの母親みたいなひとは一代でのし上がったような経営者を成金などというのだろうが、先祖が積み上げた資産に胡坐をかき、自らは何も産み出していない者にどんな価値があると言うのだろうか。

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