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スルドの声(交響) primeira desejo  作者: さくらのはなびら
ある日の会話(後日譚)
152/155

込められた言葉

『願』一文字でも良かったはずなのに、『子』をくっつけた理由。

 それによって『がんこ』読みが完成してしまうにもかかわらず、そうしたかった理由。


 姉が『祷』という字をあてがわれた理由を聴いた時にわかった。


「次の子には、私の『禮子(れいこ)』から一字使いたかったの」


 理由はわかった。

 でもそれなら、『禰禮』でも良くない?

 わけわからんし、なんて読むのかもわからんけど、どうせ異なる読み方をつけるのだがら。これならそもそも読めないから、初見で間違えられることも少ないだろう。


「だめよ。そんな神社みたいなの」


 どういうこと? 『禰』の「落語みたい」や、『祷』の「相撲みたい」と同じで、要は字面のニュアンスや雰囲気のことを言っているのか?



「コンポートにはバジルを載せるくらいで良いの。シュークリーム載せたらおかしいでしょ」


 言わんとしてることはわからなくもない、か?

 オーバースペック的なことだろうか。それかバランスとか。

 コンポートにシュークリーム、それはそれで美味しそうだと思うけど。


「でも、わたしが生まれる前から名前は決めてたんだよね? 男の子だったら『願太』だったんでしょ? 『子』入ってないよ?」


「それはそうよ。男の子だもん。私の名前は女の子に使ってもらうんだから」


 これまた、独特だなぁ。

 でも、本人がそう思うということを、おかしいとまで言えるほどには破綻していない論ではあった。


 お母さんは名前や名付けに独自のこだわりはあったが、そのこだわりの中に、自分の名前の一部を継承するということについてはさほど重きを置いていなかった。

 親の一字を使うみたいな話はよく聞くものの、実際にそういう名前をつけられている人物は言うほど多くはないように思える。どちらかと言えば、昔の方がそう言う意識が強かった印象だ。家柄や家系に対する意識が強かった時代の。

 そう考えるとお母さんの方がこだわりそうなものだが、これに関しては、お父さんの方がこだわったようだ。それも、「どうせなら」程度の優先順位で。きっとお母さんもまた、それくらいの感覚だったのだ。


 お母さんにとっては姫田家は誇るに値するもののようだが、直系ではなく、長男でもない自身の名に関してはさほど残したいと思うような感覚はないのだろう。


 お母さんの名付けの論理は、「残す」や「継なぐ」ではないのだ。

 きっと、「込める」なのだろう。「込めたい」なにかがあり、それを込める上での独自の決め事と感性がある。


 少し方向性というか、傾向がわかってきた気がした。

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