そして、これからも
わたしはいろんなことに積極的になったと思う。
これも小さな変化の連続によって変わったところだろうか。
心が軽くなったことも影響していると思う。
かつてわたしは、うまれながらにして錘を背負わされていると感じていた。
勝手に背負っていただけなのかもしれない。
錘のひとつだと思っていた優秀な姉は、今では柊と穂積の姉妹のように仲の良い友達のようでもあり、相変わらずよく面倒を見てくれる優しい姉であり、可愛がってくれる姉でもあり、物理的にも、仕事のような意味でも、わたしを遠くまで連れて行ってくれる頼もしいパートナーのような立ち位置になってくれたりしている。
今や重さどころか、軽やかな羽根のような存在になっている。
錘のひとつだと思っていた両親は、そのスタンスも立ち位置も変えてはいない。けれど、わたしが考え方を変えただけで、異なる意味合いや見解を見出すことができた。
細かい対話を重ねることで、相手を今よりも少し理解できれば、その分だけ許容できることも増える気がした。その分だけこちらのことも理解してもらえる気がした。
完全に分かり合えるなんてことにはならなくて当たり前。家族だからと、完璧を求めると拗れるのだ。
錘のひとつだと思っていた名前。
これはこれからも背負っていく。時には変わらず重しとなることもあるだろう。
好む好まないは関係なく、与えられたわたしの一部たちと、付き合って生きていかなくてはならないのだ。無視して拒絶していても何も変わらない。
自分が錘を受け入れてしまえば、持ち方や扱い方の工夫ひとつで感じる重さは変わってくるもの。
それに。
今なら少しわかる。
意味も意図もわからないけど、意味や意図があっての名付けだったと言うことは。
それならば、その重さも感じながら、貴重な日々を大切に過ごしていこう。
無くなった錘。無かった錘。受け入れた錘。
少なくとも、わたしを押さえつけるものはもう無くなっていた。
髪を伸ばすとしても、元に戻すとしても。
わたしは変わらないし、少しずつ変わり続ける。
キョウさんや『ソルエス』のみんな。
祷や両親。
柊や学校のみんな。
成長を見せるべき相手はたくさんいる。
わたしにはスルドという手段がある。
想いはマレットに込めて。
願いはスルドに託し。
音にして解き放つ。
音は空気を伝わり、みんなへと届く。
耳に。そして、心に。
ドン。
合図の音を届けられた誰かは、
デン。
誰かへと返す音を鳴らす。
響く音は交じり合い、心は混ざり合う。
デン、ドン、デン、ドーン......。
今日もきっとどこかで、スルドは誰かの想いを、誰かに届けていることだろう。
空気を震わせ、心を震わせ合って。