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それから、わたしは

 日常は優しくわたしを包んでくれる。


「はよー」


「おはよう」


 学校に行けば、柊が。

 しいちゃん、ルカ、みやちゃん。いつものメンバーも。


 だけど「いつも」は、「いつまでも」ではない。


 あと数ヶ月もすれば二年生だ。この前入学したと思ったのに、本当にあっという間。

 二年生に上がればクラス替えがある。全員同じクラスとはならないだろう。

 志望校によっては受験勉強も本格化してくる。部活をやっている柊は主力としての役割も求められるだろう。


 今ある日常は、今だけの貴重な瞬間だ。




 デビューイベントを経て、何もかもが一変した! とはならなかった。

 何かをきっかけに、すべての歯車が噛み合って、何もかもうまくいく......なんてことはならない。

 周囲の環境に変わりはないし、理解できないものは理解できないままだ。


 だけど経験や体験は僅かな変化を与え続ける。

 わたしはイベントの日とは少し違っているだろうし、『ソルエス』と出会う前からはきっとだいぶ違っているはずだ。


 日々も同じだと思う。


 昨日と明日の差に大差はないけれど、昨日と同じ明日はない。

 その積み重ねを経た一年後は、今とまったく違うはずだ。

 裏を返せば、一日一日には、一年を、ひいては人生を、劇的に変え得る素材となるポテンシャルがある。


 変えたくないものも変わってしまうから。

 噛み締めるようにその日を大切にしよう。


 変えたいことを好きなように変えられる可能性を秘めているから。

 意思と意図を持ってその日を使おう。



 自分の考え方ひとつなのだから。




「今日なんかある?」


 しいちゃんがカラオケに誘ってくれた。

 そんなふうに過ごせる機会だってあと何回あるか。


 でも。


「ごめん、美容室予約しちゃってて」


『ソルエス』と出会ってからさほど時間が経ったわけではないけれど、気付いたら髪が伸びていた。


「え、切るの?」


「どんな感じにするの?」


 柊としいちゃんが尋ねた。


「んー、実はあまり決めてなくて。伸ばすのも良いかなって思ってるけど、伸びる前と同じにしちゃうかも」


「伸ばすの良いじゃん! 似合いそー」


「色も変えちゃえば?」


「パーマもありだよね」


「そういえばみやち、色変えた?」


「うん、昨日行ったんだ。色は変えてないけど発色良くなったでしょ? いつもと違うとこ行ったの。そこ評判良いらしくてさー」


 ルカとみやちゃんが色々と提案してくれた。

 どうしよう、迷っちゃうじゃない。

 後半は自分たちの話になってたけど、実体験の話は情報としてわたしに入ってきた。


 思えば髪型自体、中学の頃から変えてなかった。本当に思い切って変えると言うのも良いのかも。カットの予約しかしてないから、今日色を変えたりは無理だけど、美容師さんに相談しようかな。

 でも、何気にこの髪型も気に入ってるんだよなー。



 わーわー言っているうちに、カラオケは明日にしてくれることになった。明日もバイトはないからそれなら参加できる。すごく嬉しい。

 しかも、今日は今日でわたしの地元の駅前のファミレスで勉強会することになった。美容室終わってから合流できる。

 柊は今から辛みチキンだのエビのやつだの、食べたいものの推挙を始めている。


 一緒に居過ぎじゃないかとも思うが、毎日の貴重さを思えばそれくらいしたい。




 

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