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フィールドには今日のイベント用の什器が既にセッティングされていた。
かなり大きなステージには前方にはマイクスタンドがいくつかと、会議で使うようなテーブルとパイプ椅子。チームカラーとロゴが印刷されたテーブルクロスと、椅子の背もたれに装着する椅子カバーがかけられている。
ステージの後方には鉄琴やドラムなど、サンバでは使う予定のない楽器が多数セッティングされていた。楽器ごとに楽譜スタンドも置かれている。何らかの演奏のパフォーマンスがあるのだろうか。
ステージの前方には返しスピーカーが四台、ステージの下には返しに対応するように同じく四台のスピーカーが置かれていた。ステージの両サイドにも二台ずつスピーカースタンドで高い位置に設置された返しスピーカーがあり、思った以上に音響設備は整っていた。
ステージ外にも、キッチンカーが出ていたり、運動会やお祭りの本部のようなテントが立てられている。
ステージ前には客席が作られていた。
スタジアムの客席を使うわけではないのか。確かにそれではステージから遠すぎて見にくいし、モニターで映すにしても、せっかく目の前に選手がいるのにモニター越しでは物足りないかもしれない。それに、モニターを使用すると使用料が高いのかも。
フィールドの状況を確認したわたしたちは、井村さんに連れられて待機用の広い会議室のような部屋に通された。壁にはモニターが掛けられていて、ファン感謝祭の様子を確認できる。
モニターの中にはステージに司会者らしきひとが上がっていてスタッフシャツを着たひとと何かを話していた。
この控え室ではもう楽器の音出しなどの確認はできないが、話すくらいは問題なく、飲み物と軽食やお菓子なども用意されていた。
飲み物はみんなもらって行ったが、軽食に手をつけるひとはまばらだった。
待機と言ってももうイベントは始まる。出番は開始一時間後ほどしてから。待ち時間としては長いとも思えるが、出番前の待機時間としては、きっとあっという間に過ぎる時間だろう。特に体を動かすダンサーは、このタイミングでお腹にものを入れにくいのではないだろうか。
ダンサーで気にせずおにぎりを食べていたのはウリさんと柊くらい。
ふたりとも、色んな意味でタフだな。
わたしはグミ噛んどこう。
《もうすぐ本番! がんばってくるね!》
クラスの友だちで作ったグループにメッセージを送った。
いつもお昼を一緒に食べる五人のグループだ。
メッセージの後に、柊のおにぎりを貪っている様子を写した画像を送る。
《がんばってー!》
《おー、いよいよだ。観に行きたかったぁ》
《柊やばー》
《ちょっと! なんで撮ってんの》
《柊いつもと変わんないじゃん》
即レスポンスがあって小気味が良い。
いつものやりとりに、少し笑ってしまった。
よし、がんばろう。