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 平気そうな祷を見ていると、そわそわしている自分のことが余計に際立ってしまい、緊張している自分を自覚してしまった。

 せっかくキョウさんの一言で気持ちが軽くなったのに。


「祷は緊張しないの?」


 祷は尋ねるわたしの頭を軽く撫で、

「がんちゃん、緊張は消さなくて良いんだよ」


 微笑みながら言う祷は何らかの解説のおねーさんのようだ。


 緊張とは正しく付き合うと良いのだという。

 適度な緊張は、身体にとっても脳にとっても集中力を高めパフォーマンス向上効果がある。

 もちろん、極度な緊張は萎縮などに繋がるが、緊張しないようにと考えれば考えるほど意識してしまうもの。

 緊張していることを認めること。

「ああ、自分は今緊張しているんだ」と客観的に捉え、あえてどこか他人事のようにしてしまうことで、緊張に囚われすぎなくなる。


「どうせ消せないし、消えたと思ってもまた湧いてきちゃうのが緊張なんだから。最初から、必ず生まれてくるもの、一緒にいなきゃいけないもの、って思っておけば、いざ出てきても、織り込み済みだから慌てる必要はない。緊張は上手く使えば役に立つんだから、仲良くなっちゃえば良いんだよ。敵はやっつけるより味方にしちゃった方が良いでしょ?」


 祷らしい考え方だ。でも理解はできた。


 緊張を認め、コントロール下に置くために、祷に倣ってゆっくりとした深呼吸を数回繰り返した。


「どう?」


「うん、なんか落ち着いてきた。と思う」


 姉妹でメンタルコントロールに励んでいるところに、ほとんど準備を終えた柊がやってきた。


「あー、新しいバテリアのシャツ! 格好良いねー」


「えへへ、良いでしょー」


 祷が裾を掴んでくるりと回る。


「うん、かわいー! わたしも買おうかな」


 バテリア用に作ったシャツだけど、ダンサーが練習着で使っても良いし、コステイロをつけない群舞の時などもチームのシャツで踊ることもあるから、持っておいて困ることはない。

 この前のプレゼンの時みたいに、少人数のユニットでパフォーマンスする時も、揃いのシャツでやっても格好良いかもと思った。


「がんちゃん、今日はアイシャドウ入れてるんだね。素敵!」


 穂積さんもやってきて、メイクを褒めてくれた。


「うん、祷に教えてもらいながらやった」


「あ、ほんとだ! 紫おとなっぽーい」


 結構濃いめにしてたつもりだけど、柊気付かなかったの?



 さて、そうこうしているうちに完スタだ。

 祷の教えや柊たちとおしゃべりしてたら、緊張感が程よく身体に馴染んだ気がした。


「オォ、なにやら仕上がってそーじゃねーか」


 集合場所にすでに来ていたキョウさんが、わたしの様子を見て親指を立てた。

 わたしも内心に奮い立つような充実した気合を感じながら、キョウさんに同じジェスチャーで応えた。


 さあ、やるぞっ!


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