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徳島のサンビスタたちはみんな気さくだった。
代表としてハルさん、企画を仕切った祷、プレゼンをしたわたしが挨拶をしたら、何やらチームへのお土産をたくさんいただいてしまった。
なんと宅配の準備までしてくれていて、受け取り先を記入するだけになっている。
結構な量で、誰かが持ち帰るのは大変なのでお言葉に甘えさせてもらった。
地元のサンバチームはバテリアのみの構成だった。
スルドはテルセイラが三本、中太鼓のヘピニキ五本、小太鼓のカイシャ七本、その他タンボリンが四名、ショカーリョも四名、アゴゴふたり、コミカルな鳴き声のような音を鳴らすクイーカ三人の編成だ。大隊というほどの所帯ではないが、『ソルエス』のバテリアと合わせれば結構な迫力のある構成だ。スルドが少なくてちょっと心許ない。
加えてフリーのダンサーが三人参加してくれる。エスコーラには所属せず、個人で活動している、言い換えれば個人で活動できる実力者だ。
歌弦は居なく、『ソルエス』のバンドがすべてを担う。
練習は大迫力だった。
普段『ソルエス』ではやらないキメなんかもあって新鮮だ。
ゆっくり来たダンサーたちも集まってきて、音に合わせて身体を動かしていた。
普段とは違う音量にパターン。ダンサーたちもなんだか昂揚しているようだった。フリーのダンサーはみんな技巧派で、勉強熱心なルイは何やら教えを請うている。
懸念だった揃える演奏もうまくいき、ヂレトールの合図や指揮にもきちんと合わせられそうで安心できた。
充実した練習だったと思う。
夕方からはフリータイムだ。
同世代メンバーにマルガさん、にーなさん、ルイぷるを加えて観光からの夜ごはんに行くことになった。
明日のことを考えると緊張してしまうので、今は一旦忘れて目の前の楽しみに集中することにした。
みんなとたくさん話して、たくさん笑った。
二日目の今日はスタジアム近くのホテルをチームで取ってくれている。
今日のホテルは大浴場はあるものの男性のみで、女性陣は文句を言いながらもホテル前の居酒屋でもたくさん話した。少し声が大きくて周囲に迷惑をかけてしまったかもしれない。
練習を頑張って、たくさん遊んだ。
程よい疲れで、今日はしっかり眠れることだろう。
明日の本番に備え、流石に今日は夜更かしせずに寝ようと思ったら、メッセージが届いた。
お父さんからだ。
明日、観に行く。とあった。
お母さんと一緒に。
すぐに祷からメッセージが届いた。
「良かったね。私たちふたりの演奏をお父さんとお母さんに観てもらおう! あしたがんばろーね」
あてがわれた部屋は、ビジネスホテルのベッドとテーブルがあるだけの広くはない居室。
簡素な部屋にひとりきり。
だけど、家にいるときよりも、家族を感じられたような気がした。