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 ステップしながら進んでいる柊。移動速度は意外と速い。気づいてもらわないとこのまま行かれてしまう。


「柊―っ!」

 わたしなりの大声で呼んだ。手もぶんぶん振っている。

 他の観客の歓声、スピーカーを通して鳴り響いている弦楽器と歌い手の歌。さらに後方から迫りつつある打楽器の音。

 多くの大きな音にわたしの声は搔き消されてしまったが、跳ねながら手を振っていたからか、柊が気付いてくれた。

 柊の方でもわたしを探しながら踊ってくれていたのかも。


 わたしの前まで来て、激しいステップを披露した柊。

 汗が弾け、長い髪が躍動している。


 格好良い。


 派手でセクシー。そんな印象のサンバだし、その印象に間違いは無いのだが、目の前で踊る同級生は、とても格好良かった。

 音に合わせてステップを踏みこなし、ひときわ大きな音のところで美しくキレのあるポーズを取り、軽く手を振り笑顔を残しつつ、颯爽と進んでいった。


 顔の作り方や手の振り方、一挙手一投足が、ひとから見られ慣れているアイドルのようで完成度が高かった。


 柊が進んでいってしまう。

 追いかけようかなと思っていたら、向こう岸のノリの良い観客の前で、さっき写真を撮ろうと言ってくれたダンサーのお姉さんと、同じくらいの年恰好だけど激しいダンスを踊っていたダンサーのお姉さんが、観客をまるでパンクロックのライブかラップバトルみたいに煽っている。

 わたしや柊と同世代っぽい細身で可愛いダンサーも巻き込まれて、観客と演者が一体になって盛り上がっていた。

 こんな盛り上がり方もあるのかと驚いた。対岸だけどこっちまで楽しくなってきて、こちら側の観客たちも盛り上がっていた。


 こちら側の観客にいた毎年このお祭りを見にきてる風のお兄さんが、去年からこのノリはじまったよな、と楽しそうに身体を揺らしながら隣のもうひとりのお兄さんと話している。毎年楽しみにしてるひとも多いのだろう。去年との違いをみつけたり、ダンサーの成長を追ったりすることもできそうだ。


 対岸では「Oi!! Oi!! 」と、ちょっと荒っぽい盛り上がり方をしている。

 ふたりのお兄さんも向こう岸に届けるようにコールを始めた。


 そうか、こういう感じは定番というわけではないのか。

 でも、楽しい。サンバの楽しみ方は多様なのかもしれない。


 と、こちら側の観客も一際盛り上がった。

 向こう岸で観客を煽ってた三人のダンサーのうち、同世代っぽい細身の子がこちらに来て、同じように場を盛り上げてくれたのだ。

 その子のダンスは盛り上がりに呼応するように高速なステップを踏んでいて、一見派手だが手指の先はしなやかで、全体の動きも滑らか。


 素人目に見ても、見惚れてしまうくらい美しかった。


 比べると、ノリの良いお姉さんダンサーの方は小柄ながらダイナミックで躍動感に溢れていた。

 もうひとりの同じく小柄なお姉さんダンサーは、一見激しいがしなやかさがあった。

 先ほど見た柊は格好良かった。

 技術の差もあるのだろうけど個性による差もありそうだ。同じようなステップでも、ダンサーそれぞれで見応えのある部分は異なるのかもしれない。


 対岸がこちらに負けじと更なる盛り上がりを見せたと思ったら、向こう側のふたりのお姉さんダンサーは早い移動のステップで先に進んでいった。

 こちら側の同世代くらいの細身のダンサーも、投げキッスして去っていった。


 うわぁ、プロっぽい! アイドルみたいで可愛い!


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