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「行けっか?」
「あ、わたしコンビニ行っておきたい」
全員揃い、荷物なども積み終えたわたしたちを見回し、問うたキョウさんにわたしはお願い事を言った。
「さっきルカと大量に買い込んだよ?」戦利品のようなコンビニ袋を掲げるみやちゃん。
「えー、でもグミ買っときたい。紅茶も」
「えー? いつもの紙パック?」「遠出で紙パックはきつくない?」ルカやしいちゃんが車中や出先で500mlの紙パック飲料は手に余ると説いてくるが、わたしは「いや、いける」と揺るがない自信を見せた。
「グミはあるよ。がんちゃんが好きなからしーふーども買ったよ」
ルカとみやちゃんは、自らの買い出しによって物資の充分さを訴えていたが、他にも行きたい人いるかもしれないし、出発前に準備の確認や態勢を整える環境は作っておきたかった。三人はキョウさんとは初対面だし、遠慮しちゃうかもしれない。
「グミはいくつあっても良いんだよ。からしーふーどはありがと! 逆に買い逃したのがあったら買ってくるし、誰か一緒に行く?」
「んー、じゃあわたしも行く」
「わたしも! トイレも行っときたい」
手を挙げた柊としいちゃんと一緒にコンビニに行くことにした。
買い込んできたくせに、「あ、だったら肉まん買ってきて。食べながら行こうよ」と、追加を頼むルカ。
キョウさんは、「小遣いやっか?」と、財布からお札を抜こうとしていたが、祷が「そこまで子どもじゃないので大丈夫! 現地でもどうせなにか奢ってくれちゃうでしょ? それで充分」と、誰にも気を使わせず、好意はありがたく受けるも、受けすぎない状況を作った。
戻って来たわたしたちを乗せ、車は出発した。
同級生五人はハイエースの後部ニ列に乗り込んだ。助手席は空いているのでキョウさんは完全にバスの運転手のようになってしまうが、その方が気を遣わなくて良いそうだ。
完全に遠足の様相で、お菓子を食べおしゃべりしながら行くことになるだろう。
祷と穂積さんはノートの運転席と助手席で、ドライブを楽しみながら行くらしい。穂積さんのセットリストを流し、歌いながら行くのだそうだ。あっちも楽しそうだ。
現地へは一時間足らずだ。県を超えると言っても旅行というほどの遠出ではない。
スタート時の買い出しの効果もあり、特に休憩を挟むことなく現地にたどり着いた。
駐車場は広く、特に駐車料金もかからないらしい。
店舗前の広い敷地は既にお祭り仕様になっていて、キッチンカーや屋台もささやかながらも出店されていた。
店内に入る。
入り口付近に店舗とシームレスな作りで入れる飲食店があった。フードコートと違い一店舗だが、売り場からそのまま入れる気やすさがある。うちの地元にあるスーパーは、中にパン屋さんが入っていて、その場で飲食できるようになっている。その作りに似ていた。
飲食店のメニューをみると、ブラジルの軽食の名前が連なっていた。ここも気になる、けど、まずは店内を回りたい。
わたしたちはわーわー言いながら店内を回った。その間、キョウさんは『フェスタ・ジュニーナ』の主催者でもあるこのお店の店長さんを呼び出し、何やら話をしていた。
キョウさん自身、このお祭りには何回か参加したことがあるらしいので、店長さんとは旧知なのかもしれない。