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 祷の停めた車の後ろに、大きな車が停まった。大きな白いハイエースだ。

 短くクラクションが鳴り、エンジンをかけたままの車の運転席の扉が開いた。


「オゥ、揃ってんか?」


 車から降りてきたキョウさんが声を掛けてきた。

 いや、車を運転するからだろうけど、その風貌にサングラスて。

 大丈夫かな? みんな怯えてないかな?


「あ、キョウさーん!」

「キョウさん、おはよー! よろしくお願いします!」


 穂積さんと柊の挨拶を皮切りに、キョウさんとは初対面の同級生たちも口々に「おはようございます!」「今日はよろしくお願いします!」と挨拶をしていた。みんな特にキョウさんに引いている様子はない。良かった。


「キョウさん、今日はありがとう!」


「オォ。いや、こっちこそ、覚えててくれてありがとヨ」


 テストが終わってみんなでどこか遊びに行こうと話をしていたとき、わたしは以前キョウさんが話してくれた、茨城県にあるブラジル人が多く住む街のスーパーが主催している『フェスタ・ジュニーナ』のイベントに、行ってみようと提案してみたのだ。

 怪我でイベントに出られなくなったわたしに、キョウさんがスルドを人前で叩く機会として誘ってくれたイベントだ。


 ブラジルでは冬に豊穣を祈願するお祭りとして、本来はブラジルでは冬にあたる六月に行われるお祭りだが、このスーパーでは毎年ブラジルと同じ時期の六月と、日本にとっての冬の二回行われていた。

 スーパーの販促を兼ねたイベントである。冬といっても十二月はクリスマスや年末があるので、被らないようハロウィンが終わった十一月早々に行うことが多かった。まあ肌寒くなってくる時期なので、それで良いのだろう。



「おはようございます。よろしくお願いします」


「おはよう。晴れて良かったナ。荷物こっちに積むもんあっか?」


「いえ、スルド二本と手荷物くらいなのでトランクと後部座席で大丈夫です」


「そか。こっちは今んところいくつかの楽器とオレのスルドだけだかんナ。全員の荷物乗せても余裕あるから必要があったら言ってくれ。ああ、あと一応大きめのクーラーボックスも持ってきてるから、好きに使ってくれ」


 祷が改めてキョウさんに挨拶をし、簡単な打ち合わせをしている。


「いのり、よろしくね」穂積さんが会話に加わる。



 みんなに『フェスタ・ジュニーナ』に行ってみないかと提案したら、みんな面白そうと言ってくれた。楽器を演奏する趣旨のお祭りだが、柊は踊りたいと騒いでいた。


 キョウさんに相談したら、心なしか嬉しそうに、連れてってやるよと、運転手を買って出てくれた。もちろん、現地ではスルドを叩き楽しむつもりもあるようだが、お酒は飲めない。

 テッチャンも巻き込んで車を出させるつもりだったようだが、都合だつかず車だけ借りることになった。テッチャンのハイエースは半分チームの共用車両のようになっていて、誰でも運転できる保険に入っているらしい。


 祷と穂積さんも行くことになって、テッチャンのハイエースは運転席と助手席を入れても七人乗りなので、祷も車を出し、穂積さんは祷の車で行くことになっていた。


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