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お祭りに繰り出したわたしたちは、連なる屋台をひと通り見てまわった。
「あ、ヤンニョムチキンある!」
みことが見つけたお店に、「わたしも買うー」と柊。片手には既に唐揚げを持っている。
「おにくばっかり」
わたしが言うと、「これからがしがし踊るんだから良いの! 足りないくらいだよ。牛タン串も買おー」と、肉足ししようとする柊。
穂積さんのおひるごはんの調達も任されてるんだよね? 穂積さんもお肉ばかりで良いの?
チカさんとメイさんは「十代は違うねー」なんて言いながらも、パックから溢れそうな大盛りの焼きそばを買っていた。
「がんちゃんはなににする?」
みんなの様子を見ながら笑っていた祷がそのままの笑顔で訊いてきた。
「んー、ヤンニョムチキンはわたしも買おうかなぁ」
「ね、絶対美味しいよね!」
みことがはしゃいだように言った。普段はどちらかといえばクールな雰囲気だからちょっと新鮮。
祷が「私もそれにしようかな」と言ったとき、「おーい」と呼びかける声がした。
「おー、みんなもお昼買いに?」
メイさんが声の主に問いで返した。
やってきたのは男性ダンサー『マランドロ』のウリさんとアキさん、マルガさんとルイのダンサー親子、ルイとは学校とクラスが同じの、歌い手『カントーラ』のアリスンの五人。
ルイとアリスンはわたしや柊、みことと同じ年齢だ。
「あれ、ハルは?」
チカさんの質問にはアキさんが答えた。ハルさんは主催の担当者と打ち合わせをしているらしい。なのでハルさんの分も買っていくと言う。
「アキもヤンニョムチキン買うの? ごちそうさま!」
みことがふざけて言うと、ルイに柊も「ごちそうさま!」なんて言っていて、メイさんやウリさんまで一緒になってたかっている。
「アキ、頼られてるねー」
「これはたかられてるんだ。山賊どもめ」
からかうように言う祷に、アキさんは憮然とした顔を作って言いながらも、この場にいる全員分買ってくれた。
チカさんが申し訳なさそうに「半分出そうか?」と言っていたが、「ハルに出させるから良い。ウリもだぞ」と断っていた。
「ここですぱっと全員分出したままにしとけば格好良かったのになぁ。格好つけきれないのがアキちゃんだよねぇ」
笑顔で斬ってくるウリさんを睨むと、言葉の代わりにウリさんが持っていたたこ焼きを勝手に食べるという反撃をするアキさん。
「あーっ‼︎」
ウリさんの嘆きに、みんな笑っている。
楽しいなぁ。
大人も子供も、男性も女性も、一緒になって同じ目線で楽しめることって、なかなか珍しいことなのではないだろうか。
女性ダンサーたちはメイクがあるのであまりゆっくりはできなかったが、わたしたちはこの時間を楽しんだ。