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もともとわたしが出たいと思っていて、怪我で演者としての出演を断念したイベントにはスタッフとして参加した。祷と一緒に。
このイベントは、打楽器のみのバツカーダでパレードをおこなう。最終地点は駅前のロータリーで、そこには音響設備がセッティングされたステージがあり、バンドが加わってのショーもする。
このパレードが結構長い。
五百メートルほどのコースを一時間ちかくかけてじっくり移動する。
ところどころに溜まる部分があり、そこでは止まってパフォーマンスする。
ステージ部分も含め、盛りだくさんのイベントだ。
集合時間は開始時間の二時間前で、集合後程なくしてミーティングが行われた。
ミーティングではコースについての説明や、イベント特有の注意事項、この後の簡単なスケジュールなどが伝えられた。
続いて、パレードの進行を管理する『アルモニア』を任されるメンバーと、給水などをするサポートメンバー、パレードに帯同するカメラマンの紹介があった。わたしと祷のことも紹介してくれた。
カメラマンは外部の方にお願いしているが、それ以外は『ソルエス』のメンバーから出している。
みんなプレイヤーだが、プレイヤーとしては出ずにスタッフとして他の参加者をサポートしてくれるのだ。
わたしはイベントに出演したくて、でも出演できなくなって、仕方なくサポートとして出ることにしたけど、サポーターがいなくてはイベントを完遂できない。
誰かがやらなくてはならないことを、その大切さと大変さを、演者としてデビューする前に体感できるのは良かったのではないかと思えるようになっていた。
ミーティングの後は、ダンサーは着替えにメイクにと忙しい。
バテリアはチームのTシャツと帽子で揃えるだけなので、準備にはそれほど時間はかからない。お祭りに繰り出してこの時間にプログラムされている別の団体のパレードを観たり、出店でおひるごはんや飲み物などを調達している。
ただし、事前に音出しの時間を設けているため、完スタ(出発できる状態)時間の前に控室を出払うことになる。
わたしは買い出しに行くと言うチカさんについて外に出た。サポーターは準備時間中にすることはあまりない。給水用の水やミネラルウォーター、小さな紙コップなどはチームであらかじめ用意してあった。
チカさんについてきたのはわたしと祷、バテリアリーダーのメイさん、柊、柊やわたしと同じ年齢のダンサーのみことの五名。穂積さんは柊に食料の調達を任せたらしい。
この時間はみんな思い思いの動きをしているので、既に祭りに繰り出しているグループや、食事は持参していて、食べ終わったら少し外を見てこようって言っているグループもあった。
男性陣は控え室は別なのでわからないが、きっと同じような状況だろう。いまお祭りに行けば、そこここで『ソルエス』のメンバーを見かけることができる。