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案件獲得情報は祷からすぐにハルさんに報告された。
広報担当のジルさんはチーム内の情報発信も統括している。ジルさんからトークアプリのメンバーグループと、メーリングリストから獲得情報と現時点で決まっている内容が配信された。
決まっていると言っても日時と場所、主旨だけだ。
これから大急ぎでこの案件を取り仕切る担当や、構成を考えるプロジェクトチームが組まれる。
今回の計画の首謀者である祷はクライアント担当との窓口にはなれるが、イベント全体を取り仕切る担当は、実施内容と現地の環境を考慮してどんな機器が必要なのか、何ができて何ができないのかなどを判断し、詳細な内容を詰めていく。クライアントに何を確認しなくてはならないかなどもここが集約する。なので、経験者が就くのが望ましい。祷ならできてしまいそうだけど。
同時に日程や場所、内容を開示してメンバーに募集をかける。
そこで集まったメンバーの内訳やボリュームで具体的な構成が決まっていく。
これをダンサー、バテリア、バンドそれぞれで取りまとめていき、みっつのパートの取りまとめが協議してセットリストやパフォーマンスの詳細、魅せ方などを固めていく。
具体的な構成が決まったら、そこに参加する演者たちが演奏や振り付け、バテリアなら決めのパターンの練習にはいる。ダンサーなら出捌けのタイミングや位置、バテリアやバンドなら演出によっては演奏を止める部分があったり、MCを入れたりなどを決め、その練習もする。
要は一連の構成を決め、振り付けなどを参加者に展開し自主練で早々に身につけ、エンサイオの限られた機会で通しの練習をしていかなくてはならない。
最初からわかっていたことだが、時間がない。そして、もうわたしたちだけでできることでもない。
ここからは、チーム一丸となって総力で進めていくのだ。
祷からは、わたしが獲ったのだと自信を持って良いと言われた。変に謙遜も遠慮もしなくて良いと。
それをするくらいなら自信に加え、誇りと責任を持って周りを巻き込み、時に頼って成功させた方が、クライアントはもちろん、チームのメンバーにとっても良いのだからと。
チームの代表としてプレゼンをして、チームとして案件を獲得するのだから、決まれば否が応にもメンバーを巻き込むことになるのだ。
自分の成果だなどと驕る必要はないが、自分の成果を卑屈に扱ってもいけない。
わたしはみんなに感謝しつつ、今後の動きの部分ではイベント経験が豊富な先輩方に委ねるところは委ね、プレイヤーとしての精度を高めるよう注力しよう。