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たくさんの方のおかげで、わたしは今この場にいて、この機会をいただけています。
少しずつでも、関わりの繋がりを繋げていくことで、ひとりじゃできないことや思いもよらないことができることがわかりました。
誰かと関わるだけで得られるものがあるなら。誰かと関わるだけで与えられるものがあるはずです。
誰かの人生を変えよう! なんて大きなことを思わなくても。
ほんの少し関わるだけで良いのなら、わたしでもできそうだと思いました。
わたしに関わってくれた、あるいは関わることになった、知らず知らずのうちに関わっていた、多くのひとたちのように。
誰かの人生のほんのひとときに、ほんの少しだけ関わらせてもらって。
その時間が、そのひとの人生にとって、少しだけ良い影響を与えられたら。
わたしがしてもらったことを、返せるんじゃないかって思ったんです。
わたしに居場所をくれたサンバ。心を掴んだ音。目を奪ったダンス。
演者のひとりとして、阿波ゼルコーバファン感謝祭に来場された多くのファンの方や、もしかなうなら選手やスタッフの方にも、サンバを通して楽しさを感じてもらえたらと思っています。
その気持ちは、きっと阿波ゼルコーバやその選手への気持ちに良い影響を与えるはずです。
売り上げとか、ファンの数の増加とか、そういうのにも繋がるはずです。
地元にも経済効果とかあるはずです。そうなったら、姫田グループにとっても良いことだと思います。
まずい。少しぐだってきた。
肝心なクライアントにとってのベネフィットの根拠が具体的になっていない。
祷は?
ちらりと様子を見る。準備は終わっているようだ。
このプレゼンは通話状態のスマートフォンで穂積さんと繋がっている。着替え用の会議室ではスマートフォンをスピーカーにして内容が共有されている。細かいやりとりはメッセージで連携していた。
着替えが完了するまでは、祷は作業を終えても作業しているふりをすることになっていた。作業が終わった様子を見せていると言うことは、着替えも完了していると言うこと。
スピーチ終盤で合図となる言葉を発することで、穂積さんと柊がこの部屋に入ってくる手筈だ。
もういつでも呼べるのか。
スピーチを畳みに入らなくては。
安達さんには関係のないことをたくさん言いました。すみません。
お伝えしたかったことは、今回の件に関して、わたしにはいろいろなひととの関わりへの感謝を、今回の件を通してできるだけ多くのひとたちへ返していきたいということです。