【喫煙所】通販の口コミ【漫才】
わ:わかば
セ:セッタ
「「どうもー!!」」
わ「はじめまして、ぼうずとロン毛のコンビでやってる『喫煙所』言います。このごりごりでぼうずの高身長が『セッタ』、ロン毛の私が『わかば』って言います。今日は名前だけでも覚えて帰ってください」
セ「どした? かなり丁寧な入りするやん」
わ「そら、おれらこんなどぎつい見た目やし、しかもコンビ名もちょっとあれやろ? こんなもん、見た目通りの入りしたら、みんなネタ見るどころかステージから目を背けてまうで」
セ「そらそうか」
わ「せやで。だからな、おれらみたいなコンビは入りだけでも丁寧にせなあかんねや」
セ「わかった、じゃあ早速丁寧にいこう。そや、あんな、最近悩んでることがあるんや」
わ「おお、丁寧にいこう言ったくせに早速普通に入ったなあ。まあええわ、どないしたん?」
セ「おれな、いい口コミが書きたいんや」
わ「あら、なんやええことしようとしてんねんな」
セ「せやねん。通販のさ、口コミ欄にいい内容書いてさ、販売者さんを応援したいんや」
わ「なんや徳を積むような行いやな」
セ「せやろ? でもな、おれが書いた口コミっていつも消されてまうねん」
わ「そらショックやな。なんて書いたか教えてくれん?」
セ「まず、投稿者名なんやけど……」
わ「いや、それはどーでもええわ」
セ「ピラミッドスキーム」
わ「ちょっと待て。ピラミッドス……え、なにそれ?」
セ「日本語で言うと無限連鎖講や」
わ「いや、わからんわからん。それ聞いても『あーあれな!』とはならんねん。えらいけったいな名前にしたんやな。因みにどういう意味なん?」
セ「ねずみ講や」
わ「くそやないか! お前ネーミングセンスバグってるやろ。名前の時点でアウトやんけ」
セ「まあ待てや。投稿者名なんておまけみたいなもんやから。とりあえず内容を聞いてくれや」
わ「おまけの存在に許されるインパクトちゃうねん! まあ、とりあえず投稿者名は置いとこ。はよ続き言ってみいや」
セ「このドライヤーに出会ってから、私の人生は大きく変わりました」
わ「ドライヤーの口コミなんや。でも、ドライヤーで人生変わるて、それは大きく出過ぎちゃうか? ドライヤーには荷が重すぎるわ」
セ「ワンオペで子育てをしている私にとって、髪を乾かす時はどうしても子どもから目を離してしまいがちになるため……」
わ「おい、今なんて言った?」
セ「いつも少しでも早く乾かすことができればと思っていました。そんなある日、私はこのドライヤーと出会いました。このドライヤー、風力をマックスにすると、10分近くかかっていた乾かす時間が、なんと5秒になったんです!」
わ「おい、待てや!」
セ「なんや?」
わ「なんや? ちゃうねん。何がワンオペで子育てや、お前子どもおらんやろ!」
セ「おらんけど、ワンオペで生活してんで?」
わ「ただの独身生活をワンオペ言うなや! お前、時間に余裕ありまくりやし、そもそもぼうずやねんから乾かすのに10分も時間かからんやろ」
セ「せやけどさ、みんなドライヤーの時間は短い方がええやん。それでな、考えてん」
わ「何をや?」
セ「ワンオペ育児中の人が、時短できたって書いたらリアルな感じするんちゃうかなって」
わ「リアルな感じするけど、書いてる内容が100%フィクションやないか!」
セ「そんなこと言ったかてさ、嘘でもええから話にオチをつけろって子どもの時に言われたやろ?」
わ「言われてへんわ! そんな教育受けんのは大阪の一部の界隈だけや!」
セ「マジかよ。おれは子どもの頃に受けた教育に基づいて口コミにもオチをつけなあかんな思ってさ」
わ「口コミにオチは必要ないし、そもそも嘘を載せとる時点であかんねん!」
セ「でも、髪が5秒で乾くのはほんまやで」
わ「5秒で乾くってどんなドライヤーやねん! 威力バケモンやないか」
セ「たまに焦げ臭いし、火の粉出るけどな」
わ「ただの不良品やないか! ドライヤーから普通火の粉なんて出えへんねん」
セ「でもな、ドライヤーから出る火の粉はええぞ。短い時間でも懸命に輝き、音もなくすっと消える様は趣があるんや」
わ「線香花火の感想みたいなこと言うなや! そんなええもんちゃうねんその火は」
セ「でも、その火力のおかげか髪は5秒で乾くで」
わ「それはお前がぼうずやからや! あと、ドライヤーの性能の話で火力なんて単語は出て来んねん普通は!」
セ「そうか……せっかくいい口コミやと思ったのにな。でも、それでやろか? おれが口コミ書いた後に『髪がぜんぜん乾かない』『すぐに壊れた』『金をドブに捨てるのと同じ』みたいなコメントが続いてん」
わ「品質最悪やないか!」
セ「そやったんかー、安くてええやつや思ったのに。じゃあ、あれもあかんかったんかな」
わ「あれってなんや? 言ってみ」
セ「バスタオルとヘアブラシにも口コミ書いたけど消されたんや」
わ「どうせ口コミの内容がおかしかったんやろ?」
セ「でも、本当のことしか書いてへんで? バスタオルには『驚きの吸水力で5秒で髪が乾いた』って書いてな、ヘアブラシには『どんな寝癖も5秒で整う』って書いてん」
わ「ぼうずやからや! それはお前がぼうずであることが起因しとんねん。普通ありえへんねんそんなこと」
セ「でも、バスタオルもヘアブラシも不良品ちゃうで? 火の粉出えへんし」
わ「出たら怖いわ! なんでタオルやヘアブラシから火の粉が出るんや、出てたまるか! てか、バスタオルで髪拭き切れるんやからドライヤーで乾かす必要ないやないか」
セ「そら気分的にドライヤー使いたいやん。使った方が髪を乾かした感じするし」
わ「お前の気分なんか知らんわ! あと、ほぼスキンヘッドのくせに寝癖ってなんやねん。そんなもんあらへんやろ」
セ「ないで」
わ「ほんまにないんかい! お前そしたらヘアブラシの口コミは完全に嘘やないか」
セ「ほんまやな。でも、きっとおれが使ったら5秒以内寝癖整うで」
わ「整うもなにも最初から寝癖なんてないやろが! お前、やってることでたらめ過ぎんねん。そら、口コミ消されるわ」
セ「それは困ったなあ。せっかくビジネスチャンスや思ったのに」
わ「ビジネスチャンス? どこにそんなチャンス要素があんねん」
セ「おれな、おれが書いた口コミで商品がたくさん売れるようになったらセミナー開こうと思ってん」
わ「セミナー?」
セ「せや、魅力的な口コミの書き方セミナーや」
わ「胡散臭さ満載すぎるやろそんなセミナー。そもそも口コミ消されとるやつが何ぬかしとんねん」
セ「まあ落ち着け、これが儲かるはずなんや。まず、このセミナーを受けるにはサークルに入ってもらう必要があんねん。入会費は一万円や」
わ「高すぎるやろ! 誰が払うねんそんなもん」
セ「最後まで聞けって。この入会費、最初は出費やけどな、誰かに紹介して二人以上加入させることができたら、新しく入った人の入会費の50%が紹介料としてもらえるんや」
わ「ん? なんやその仕組み」
セ「そんでな、紹介した人がまた新しい人に声をかけて入会した人が出てくるとするやろ? そしたらな、何もしてなくても入会費の10%が……」
わ「ねずみ講やないか! お前それ完全にアウトや! どこが販売者を応援したいや、この金の亡者が」
セ「いやいや、何言ってんねん。そんなことよりとりあえずおれに一万円払ってサークルに入ってみーひんか?」
わ「入るわけないやろ! もうええわ」
「「ありがとうございましたー」」
※いでっち51号様主催、漫才王になろうGPエントリー作品です