盲目の敵
全てモノクロ強いては色盲、私はこれが非現実だとは到底思えない。
肌さえ触れれば生きてるなんて実感できる。
これが私の現実、視界が生身の人間だとも認知できない。
私の敵は耳元の囁きに対する、敵の防御、触れるナイフはいつも黒い。
今回は失敗した、ナイフで片眼を潰された。私の急所だと言うのに。
「この声にお世話になるなんて」と囁き
「見えない」
「片眼を失うと失明する確率が増えるのよ」
「聴こえる」
「うちらの誘導ミス」
「点字の勉強はしてたから日記つけることにするよ」
「もうスパイはしない?」
「慣れてからね」
私はベッドからゆっくり起きて、机に向かった。見えない状態での移動は危うい。ようやく机に座ると喉が乾く、ミネラルウォーターを口にした。点字器は引き出しの中、触覚的に打つには一苦労だ。
〈なんじか、 わたしわ めを さまさない いつも きこえる わたしの あいぼー。 せんとー いしき なく ぜつぼー。〉と記す
「やっぱり落ち込んでいたんだ」
「まあね、精神科の医師に言ったら即入院、スパイ容疑は妄想だって」
玄関からノックが聞こえた、私はほふく前進で向かった。現れたのは福祉相談員の方だった。本当に敵意が無いことを感じると私はとたんにおしゃべりになった。一時間ほどで帰っていった。
「何で施設に入らなくてはいけないのか」と私は考えた。殺風景な部屋は私を自由にさせた。血は赤ってなんだろう。それさえ解けないままで失明したというのに。敵は誰だ?
施設に入る為に身支度して職員のバンに乗せられ、向かった。
着いた先で薬を飲まされ、私はうたた寝をした、今までのモノクロの思い出が走馬灯のように駆け巡った。私が精神病だということを知られてしまったのか!調子がよくなると夢中になって点筆を打ち続けた。
〈わたしわ すぱい てきわ ころす ないふ もたせろー 〉と記す
「死ね!」
「なんだと?脅かすんじゃねえ!」と私は職員を殴ってしまった。
耳元での囁きは私を苛めるようになった。代わりに私は色んな人に暴力を振るうようになった。
いつの間に何もない格子の部屋、精神科の保護室、敵は誰だ?
「あのね、リアリティーあるゲームだったんじゃない?だからスパイに成り上がりしたのよ、インプラント抜いたから、幻聴も落ち着くと思うわよ」と看護師。
「目は?」
「他人にやられたのよ、色盲は元々、治安もあれこれ大変だから、田舎で休んでね」
〈いんぷらんとの あくむ だった〉と記す