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第3話 学校なんかサボるんじゃない

一瞬のためらいをよぎったが、僕はすぐ声の発生地の上空に駆け付けた。


そこにあるのは目を疑う光景だった。


「正気か?これ」


思わずそんな言葉を口にした。


目の前にいるのは奇声をあげていた人達、じゃなくて、よく見れば動物も、魔物も、精霊も、生きとし生けるすべてのものが正気を失って、島中をウロウロ徘徊している。何より怖いのは、残り少ない正気を保っている人もなにかを見たように次々と発狂していく。でも、僕はなにも見えなかった。


僕は一種の狂気を感じた。


「魔導システムはどうした?なぜ効かない?」


魔法を研究するするほど、魔法の集大成【賢者の心】の偉大さをわかる。すべての魔導士はそう思っている―――いつか魔法で宇宙を制す。実際宇宙も魔法との相性がいいみたいに、魔法方程式の通りに動いてる。


十五歳にして上位魔導士の僕は、間違いなく魔導士のエリートだ。初めて魔法を知った日からずっと魔導士の頂点に立つことを夢見ていた。いつか魔法を持って宇宙すべての秘密を解き明かすと、思っていた。


【賢者の心】はなにを感知していたのか、あるいはただ発狂した人々を治したいだけなのか、光線を浮かび上がって、全員を纏わりついた。でも、如何やら効果がないみたい、いくら時間が経っても発狂する人数は増え続ける一方だった。


「新種の錯乱魔法か?でも魔力の気配全然感じない。【賢者の心】も記録してないなんで、正気の沙汰じゃない。」


そういうこと言っているけど、何故か胸の鼓動がだんだん高ぶっていく。生まれてからずっと【賢者の心】にまもられて一度も感じたことのない命の危機感を味わえたせいのか、それとも何か欲しいものをようやく手に入れると予感したのか、僕はすぐ逃げたいという体の本能を抑え、【船島】に降りた。


何も見えない、何も聞こえない、何も触れない。けど【船島】の人は確かに何を見て、何を聞こえ、何に触れられ、そして発狂した。僕は必死に何物の姿を探っていた。


『賢者の加護 上位』

『視覚域拡大 レベル9』

『聴覚域拡大 レベル9』

『触覚域拡大 レベル9』

『物質感知 レベル9』

『エネルギー感知 レベル9』


むだ!むだ!むだ!いくら魔法を使っても見えない、聞こえない、触れない、何も感じない!


「なんで!感知系の魔法ならレベル9もう最上位、賢者でも僕と同じ!なんでなにも見えない!」


胸の中の予感がだんだん確信となっていく。これだ!これだ!


僕の息が荒々しくなった。魔法理論なら全部分かってる。何せあのじいじも負けを認めたから。後は精神力を増やし、順を追って体内の魔法陣を構築して、レベルアップだけのことだ。途中で自分に合う魔法陣構造を生み出せなくて止まるかもしれないが、いつかきっと魔法の頂上に立つと思っていた。


その時がくるまでただ魔法陣を構築していく何の変哲もないの魔法人生だったと思っていたのに、まさかそんなに早く現存魔法理論の限界を超える時が来たとは。人生過ごして見なきゃわかんないもんだな。


「システム、一体なに起こっている?それに上と連絡とれた?」


魔導士として最も基礎な素質――冷静。いくら真相を知りたいとは言え、いまの状況では一番ことを急ぐのは増援を求めることだ。何も見えないとしたら、今僕にできることは


『アルス流 紅葉の舞 拘束』

浄化(クリアリング) レベル9』


瞬く間に無数の紅葉が風を乗って狂気に陥った人達を包み込む、浄化魔法陣が僕の体から次々へと現れ、人々を覆っていく。しかし動きは止めたものの、いくら浄化の光が体に流れ込んだとしても、歪んだ表情は緩めない。


「システム?どうして返事がないの?解析が出来た?」


僕がやれることはあくまでこれくらい、狂気に陥った人々を救えるのは【賢者の心】だけだ。


しかし僕の期待と裏腹に、【賢者の心】は答えを出すところか、光線をゆがませ、だんだん崩れていく!


抵抗もしているようにだが、何が抗えないもの押されたのように消えていく。


「バカな!【賢者の心】が狂っている!?』


目の前にいるのは信じがたい光景だった。僕はしばらく呆気に取られている。自分が最高傑作と憧れ続いた【賢者の心】が何者に敗れる姿は信じたくないもないが、心の奥深くにずっと眠っていた何かが目覚め始めたような感じさえした。


いったい何だろう、この胸の高ぶり。


命の危機に直面した恐怖?世界観が崩れ落ちたの不安?いやいや、そんなんものじゃない!


魔法文明を超えた何かが、僕のそばにいる!


遠い遠い宇宙の彼方なんかじゃなくて、ただいま、僕の目の前にいる!


極力気付かないようにしていたのが、心のどこかで、文明の知恵に従わなければならない人生に窮屈さ感じていた。だから僕は文明の頂点に立つことを望んでいた。頂上に立つならまた違う風景が見えるだと、そう願っていた。


そう、僕は興奮している、多分僕の人生の中で一番興奮している。


「出てこい!!!おまえ!いったい何者だ!」


だから僕は声を出して見た。通信魔法を使うんじゃなくて、声を出した。そして、聴覚域拡大の魔法を解いた。


「ふんふんふん~~ふんふん~~~~ふんふんふんふん~~」


どこからともなく、笑え声が僕の耳に届いた。その声は何というと…そうだ、この世のものとは思えない美しさ、そして妖しさを帯びていた声だった。


「笑えない話だな、魔導士がいくら感知領域を広げても見えないものが、まさか普通の人の感覚範囲にいるとは、盲点だった。」


「ふんふん、そうじゃないよ。私は君に姿を見せたいから、君は私を見た。それだけなのよ」


敵だったのに、この声を聞いて、僕はなぜかうれしくてたまらなかった。


「そうなのか、それより、あなたは何者なの?」


「ふんふんふん~わたしのこと聞く前に君のことを教えてくれないのかしら~」


「僕はルルシア・アルス、魔導士だ」


何故か世間話を始めていた。


「君はなぜここにいるのかしら?」


「散歩」


「ふんふんふん~面白いひと」


「ありがとう」


「君逃げないの?それとも怖くて逃げられないのかしら」


「さぁどうかな~そろそろ僕の質問に答えてください」


僕は声をするほうへ振り返った。そして、息を吞んだ。


そんなに髪が長い人(?)は初めて見た、まるで周囲を全部漆黒に染まるな勢いで散らばって、危険な匂いを放っている。白い肌は輝きを帯びて、宝石を思わせた。黒い瞳に妖しい光が宿って、思わず目をそらした。


「ふんふんふんふ、わたしを見っちゃった、どうかしら~」


「何を」


「わ~た~し~、きれいでしょう~」


「別に」


「ふんふんふんふん~~」


また笑った。如何やら笑い好きな女だ。


「無駄は承知のうえ、でも見えたからには戦わせてもらう」


「ふんふんふん~わたしとやる気かしら」


当然だ、見せてくれ、あなたの力。


『アルス流 紅葉の刃 錬成』


僕の手に赤い一本の刀が現れた、風を纏い、モミジ式魔法陣特有の色を光っている。そして両足と背中に動力魔法陣が浮かび、僕は残影も残らない速度で彼女に向かって剣を斬りかかった。


しかし彼女に近づくと、突如全身の魔法陣が悲鳴を上げたように、崩れかけていた。僕は急いで足を止めた。すると、彼女の髪が突然動き出した!帯のように僕を包み込み、そして彼女の前に連れて行った。


いざ近距離になると、僕全身の魔法陣が一気に崩壊した。久しぶりの感覚を味わえ間もなく、彼女がさらに近づいてくる。


肌が触れ合いそうな距離で、僕は彼女の息の温もりを感じながら、上目遣いで彼女の瞳を見つめていた。


その瞳には一切の色彩もなし、ただ純粋の黒。じっと見つめていると闇の渦に吸い込まれそうな感じがする。加えて彼女の髪がホントに僕を吸い込んでる。とても奇妙な感覚だ。縛られているのになぜか柔らかい布団にのめり込んでるような気がする。彼女と息を交わしながら、全身張りつめた神経が緩めていく。


「君、わたしと話せるよね~」


「それがどうした」


「ふんふんふんふん、わたし、久々人としゃべったの~」


なんだ、コミュ障が、わかる。


「ふんふんふんふん、何が勘違いしてるけど、君、魔導士って言ったよね」


今度は彼女が僕の目を見つめて、微笑みを浮かぶ。


何が始まる予感、危険を感じながらも僕は胸の高鳴りを抑えることができなかった。


「ふんふんふんふん~」


彼女はただ笑っているだけ。そう思っていると。


ゴンゴン。


意識が吹っ飛んだ。いや、吹っ飛んだじゃない、押し潰された。


突然大量の声と画面が僕の頭に乗り込んでくる。ある少年が体を屈めて何をしている……ある老人が口を開いて何かを言っている……ある人だかりが何かを囲んでいる…………


大量の情報が同時に押し寄せて、頭が破裂しそうになって、いまがどういう状況なのか考える余地も失った。


やがて痛覚さえも失え、ただただ声と画面の波に押されて、どこかへと向かっていく。



















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