第1話 ルルシア・アルス
「私たちの星は魔能物質に包まれている、そのせいでとても特殊の環境を生み出していた。例えばみんなさんよくご存知でいたマイルドもそうですね。それは現実世界と独立して、全く別の姿をしている次元です。なぜマイルドと呼ばれてのかについては、諸説ありますが、やはり一番主流なのは人類の精神に関する話ですね。またマイルドは魔法にとってその上ない媒質としてよく知られている……」
アルカナ大学付属第一高等学校(略称アル学園)、一年A組、時間は四限目、マイルド理論の授業だった。
「こんなの常識じゃない?」
教室中央に投影された自動魔法授業システムを見るや否や、ひとりの男子生徒がぼそぼそと文句を言っている。
「そもそもなんで学校で映像を見るんだ、どこにもできるだろう、あの先生、サボるにもほどがある、顔くらい見せるよ」
天井から差し込んだ光が彼の銀髪に輝きを与えている。透き通った肌が異様な美しさを放っており、細長い指がそっと顎に当てている。ふいになにか思い付いたようにうつむい始めると、今度は別の方向から声が聞こえてきた。
「ねえねえ、あの人、かっこよくない?」
「ええ、ルルシアくん知らないの?ほら、昨日の入学式も新入生代表としてスピーチしたでしょう、挨拶しかしてないけど……十五歳で上位魔導士試験を合格した天才だよ、賢者のなれるかも」
「えええええええええ!」
「それに聞いた話だが、魔法理論に関してはある大魔導士も負けを認めたらしいよ」
ぇ
「えぇうそ!大魔導士が!!!」
女子生徒が驚くのも当然のこと、何せ十五歳の上位魔導士は【賢者の塔】の歴史上でもナンバー10に入れる記録であり、現役なら間違いなく最年少上位魔導士だった。
『賢者の塔』の賢者みんな少年時代とても優秀なわけでもないけど、少なくとも卓越した少年が未来賢者になれる確率は他の人より大き。
まさに少年は今の時代一番期待されている新星だ。
少年の名前はルルシア・アルス、世にも稀な美貌の持ち主でありながら常人とかけ離れた才能をもつ、何より彼が魔法に注ぐ熱情は賢者も打ち負けるほどのものだ。
「つまらない授業だな、抜けようか」
と少年は自分だけ聞こえる声でつぶやいた。
『実像生成』
『光線屈折』
すると、少年の瞳に密かに虹色の魔法陣が浮かび上がって、微かに光っていると瞬く間に消えていた。
「あれをやろう」
少年は席から立ち上がり、ぶらりと廊下へ足を運び始めた。けれど不思議のことで、誰も彼の生徒あるまじき行為に気付かなかったようだ。更に、もとの席に、もう一人の少年が何気なく座っていた!
どうやらなにか面白いことでも思い出したらしく、少年は神秘な微笑みを浮かびながら足を進んでいる。この学校の廊下は螺旋のかたちをして各教室を巻き付け、まるで迷宮のよう錯綜している。至る所に繊密な魔法紋様が施されていた。天井に星空がうつされて、魔法陣と交錯して美しい光を放っている。もちろん本当の星空ではない、オシャレした照明器具だけだ。
少年は廊下を通り抜け、階段の奥にある泉の前に止まった。泉は澄んだ水をたたえて、中央部には六芒星の魔法陣が光を放っている。水の柱は高く聳えていて、三層に分けられた池の階段に落ちると、水しぶきと共に精霊たちがマイルドから姿を現した。水気を帯びた小さいな体を宙に浮かばせながら、じっと少年を見つめていた。
「参ったな、精霊には『光線屈折』が通じないのを忘れた。まぁほっておいてもなにもしないだろう」
少年の誰にも気づない散策計画に少し支障が出ったみないが、気にする必要もなさそうらしい。
『マイルドワープ』
少年の体が突然浮かび上がった無数の魔法陣に包まれていく。泉の精霊たちがそれを見てびっくりしたようで、一斉遠くへと飛び出した。そして少年は姿を消した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
上位魔法『マイルドワープ』
を使って、僕がマイルドに入った。
初めてマイルドを入った時からもうしばらく経ったけど、慣れないものは慣れないです。
『このでたらめの色彩、何とかならないか?』
目の前に広がるのはこの世とは思えない光景だった。(まぁ確かに現実世界じゃないけど)まるで油彩画の中に迷い込んだみたいな感じがして、それに普通の油彩画じゃない、どこも歪んでいて(偏見)、全然美感がない(偏見)、見るだけで頭がぐるぐる回っているような感じがする。とってもあの精霊たちが誕生した場所とは思えない(偏見)。
「さぁ、いこうか」
僕は目の前に突如姿を現した巨大な渦潮を見て、少し精神を集中させた。なにせ僕は今異世界へと旅立つんだ。
【スピリン】
アルカナ大学が管理している異世界だ。ここは出入口の一つのだ。マンドは魔能生命を誕生させるほか、稀に空間を極端にゆがませ、様々な異次元も生み出していた。
『シールド レベル7』
『氷属性変換』
『魔能感知』
異次元空間に入るには、魔能が荒れ狂っている危険帯を通らなければならない。
高濃度の魔能に押し潰されないように、しっかり対策を立っておこう。
スピリンを取り巻く魔能帯は主に水属性を帯びている、氷属性のシールドを張れば衝突を最大限に軽減できる。何より重要なのは魔能の汐を逆らわないことだ、渦の中に乗り込むバカがどこにいる。
また新参上位魔導士だから、異次元空間を行き来することは慎重に運ぶほうが身のためだ。
僕は魔能濃度の低いルートを選んで着々と向こう岸へ進んでいく。やっぱりほとんど水属性の魔能のせい、周りはほぼ水色一色、マイルドと比べればよほどマシだ(偏見)、むしろ心地良い景色だ。
やがて魔能汐が遠ざかっていく、前方に光が見えてきた。スピリンを囲む幕が目の前に広がっている。【境界線】と呼ばれているこの幕は、異次元空間とマイルドを隔て、過酷な環境からスピリンを守っていた。
『浮遊』
【境界線】を超えると、ようやくスピリンに入った。僕は防御魔法を解け、周りを見渡した。
予想通り空でした、大体この扉から入れば空に到着する。スピリンは普通の星の形をしていない、一つ大きな大陸だ。
大陸というより泉だ。スピリン全体は水に覆われていて、各地に魔能の川が流れている、そして中央部に一つになって空へ飛んでいき、また各地に落ちる。水が魔能につられて地上から空中へ、空中から地上に循環している。実に息を吞むほどの絶景だった。
スピリン各地に島々が点在していて、色んな種族が生息している。いまは【賢者の塔】の一部けどまた昔の名残が残っていて、自然の絶景と加えて観光の名所となった。
ちなみに我が校の校長もここの出身という。もちろんこんな危険なルートを通るんじゃない、スピリンもうとくに遠い昔から開発済み、転移魔法陣が設置されている。つまり安全のルートが敷かれたわけだ。
むしろこの星随一のリゾートとして名高い、毎日観光客の足跡が絶たない。まったく賑わいの代名詞とも言っていいくらいだ。
「こんなルートを通るしかないのは気の毒が、まぁゆっくり観光するか。」
僕はスピリンの太陽を見てそうつぶやいた。




