命の恩人
ヒュ〜バシャ〜ん!海?川?湖?
とにかく水の中へ身体ごと突っ込んでいた。
(ゴボボ〜ブハ!)私は生きているのか?どうなっているのかわからないまま水の底へ沈んでいった。
また意識を失ってしまった。
(ガハ!ハ〜ハ〜ハ〜 、ぐぅハ!)
(おい!しっかりしろ!兄ちゃん、とりあえず水を吐くんだ。だいぶ浸かってたからな〜)
知らないスキンヘッドのおじさんに背中を擦ってもらいながら、無事落ち着く事ができた。
(ハ〜ハ〜、あ、ありがとうございます。助かりました。)
(礼はいいって、それより大丈夫か?なんだってあんな所に沈んでたんだ〜?
俺はでかい魚かと思ってモリを撃つところだったよ)
それを聞いて、すっごく大事な運を使ったような気がした。
(とりあえず、このままじゃアレだ!家に来い)
(すみません、何から何まで)
右も左もわからないまま状況に、お言葉に甘えることにした。
(帰ったぞ〜!悪い、コイツに風呂と飯を頼む温かいのな!)
(おかえり!はいよ!…おや〜びしょ濡れじゃないかい、
まずはお風呂に行っとくれ)
二人のやり取りを聞いて私はすごく安心することができた。
ひとまずお風呂に浸かった。何日ぶりのお風呂だろう?
日本のお風呂とは行かないが、お湯に浸けた事に有り難みを感じた。
(おい!兄ちゃん、服は置いておくからな)
(ありがとうございます)
(まあ〜いろいろあったみたいだし、ゆっくりしてけ)
その優しさに、涙が溢れそうになった。ちょっとだけ生きててよかったと思えた。
だけど、あの時の老婆にしてやられた事が未だに信じきれていない。確かに名前を覚えていないし、しらない世界に来たことは間違いないようだ。
まあ〜ゆっくり考えてみればいいか。そう思いながらお風呂をあとにした。
(お!サッパリしたか?)
(改めて、ありがとうございます。えっと〜)
(自己紹介がまだだったな〜、俺はモーガン、こっちは
カミさんの、ムージーだ。よろしくな)
名前からここは日本では無いことはわかった。
(私の名前は、え〜と)
命の恩人だし嘘は良くないよなと思い答えた。
(実は、私自身名前を忘れてしまったというか
無くしてて、分からないのです。とりあえず好きに呼んでもらえますか?)
それを聞いたムージーさんは涙ながらに
(そうか〜よっぽど酷い目にあったんだね〜、とにかく今日はゆったりしていってね)
またまた泣きそうになりそうだった。
(と言っても〜名前か〜とりあえず兄ちゃんってよぶしかないな〜、この国では名前は命の次に大事なんだ。
その辺りはしってるよな?)
困った顔をしてたら
(それはまた明日でも、今日は休みが必要よ)
その日は、ムージーさんの手料理を頂き久々に気持ち良く眠る事が出来た。
そうそう、モーガンさんの家はログハウス風の風通しの良い建物だったし、ムージーさんの手料理は美味しかったが、私の知っている物、造りは見当たらなかった。
その事からも、知らない世界なんだな〜と思わざるを得なかった。
明日からは、情報収集とこれからの事を考えて行くことにした。