春
「おじさん!今日は泣いてない?」
「あぁ、今日は泣いてないよ。
心配ありがとう。小さなレディ。」
「本当だ!よかった!」
駆け寄ってた小さな女の子は男を見上げながら笑った。
「ねぇ、おじさん。
今日のお昼ご飯決まってる?
私のお家、ご飯屋さんなの!
良かったら来てね!」
この間はビックリして言い忘れちゃったから、と商魂逞しく女の子は笑った。
「おや、心配して来てくれたのかと思ったら宣伝かい?
こんな可愛いレディ誘われたら行かなくては。
ちょうどご飯屋さんを探してたんだ。」
男はキザに片目を瞑りながら手のひらを差し出し、
案内してくれるかい?君のオススメのお店に。レディお手をどうぞ。と笑った。
女の子は手を重ねながら
「じゃあ、王都一の煮込み料理出す私の家に連れてってあげる!とっても美味しいんだから!」
ほっぺた落ちちゃうんだよ〜!こもれびていの料理は!と片手で頬をおさえつつ男を引っ張り歩き出した。
そのつなぎ方じゃなかったんだが…
と繋がれぶんぶんとふられている手を見つつ
「木漏れ日亭って言うんだね、君のお家は。」
噛みしめるように男は呟いた。
この辺じゃあ有名なんだよ!と胸を張りながら手をひく女の子。
通り道の商店の大人達は手をひく女の子と男を笑みを浮かべながら見て、またお客さん案内してるのかい?木漏れ日亭はオススメだよ!特に煮込み料理!あと美男美女夫婦の夫婦漫才!と笑う。
うちのお父さんとお母さんはいつまでもラブラブなんだから…!とどこか誇らしそうに照れながら返す女の子。
微笑ましくみながら歩く男を振り返りながら女の子は言った。
「ねぇ、なんで泣いてたの?」
突然ふられた話題に驚きながら男は
「そうだねぇ…。
御伽話を思い出して。」
と眩しそうに小さく笑った。
おとぎばなし?おとぎばなしって、どんなお話?
なんのこと?
聞かせて!!広場に寄り道!と女の子は歩く方向をかえた。
当然手を繋いでいた男も引っ張られていく。
苦笑いしつつ眩しそうに女の子を見ながら広場まで歩いた。
昔ね、氷の貴公子って呼ばれた男の子がいたんだ───
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氷の貴公子の話はまだない