六話
レオ達が目を覚ますと見渡す限り高い木が生茂っている森にいた。
辺りを見渡してもどこに何があるのか見当が付かない。
「ここはどこなんだよ」
「分からないわ」
「あたしらダンジョンにいたよな。
ここ、明らかにダンジョンじゃないよな」
「うん。
私にもさっぱりね。
動いた方がいいと思う」
「賛成だ。
じっとしているよりかはマシだ」
彼女たちは行動を開始することにしたようだ。
歩き始めてから30分した時エレナはあることに気付く。
「レオ君大丈夫?
なんか、元気がないけど」
レオは気が沈んでいるように見える。
彼は今までのことを思い出す。
(また、迷惑かけてしまった。
僕は強くならないと。
だけど、僕は強くなれない。
このままじゃ、ダメなのに……)
彼は自虐の念に駆られていた。
自分の弱さを責めているのだろう。
確かに彼は無駄な行動をした。
そのことは間違いない事実である。
結果的は良かったがその行動が周りに迷惑を掛けたことも否めない。
「おい、なんか言えよ」
シエナに声を掛けられる。
(ああ、なんて返せばいいんだ。
僕がこんなことをしたから返す言葉がない)
「お前どうしてしまったんだよ」
「すいません」
レオが何とかして捻り出した言葉はこれだった。
「なんで謝るんだ」
「それは……」
彼の声はとても震えていた。
そして、また黙り込む。
彼はどうすればいいのか分からなくなってしまったのだ。
「キャアァァァァーーーーーーー」
レオに助け舟を出すように悲鳴が聞こえてくる。
「この悲鳴何かしら」
「西南の方向か」
彼女らは悲鳴に引き寄せられて走り出す。
レオはその様子を見ることしかできなかったがすぐに後を追う。
その場所はそこまで遠くなく2分ほど走ったところで見えてきた。
そこにいたのは金髪の人。
顔は良く見えないが服装はフリルの付いた赤とピンクをがベースとなったドレスを着ている十代当たりの人が見える。
その人はオークに襲われていた。
後ろは崖。目の前にはオーク。
絶体絶命な状態だ。
「おい、あいつはなんだ?」
「多分、貴族の娘じゃない?」
「貴族か~。
厄介事に巻き込まれのは勘弁して欲しいんだが」
彼女らの目線の先にいる子は貴族の令嬢だろうか。
平民が貴族と関わるとろくなことがない。
以前貴族が礼儀作法を教えると称して少女を城に招き入れ拷問し惨殺したという事件があった。
こういう事は場所にもよるが頻繫に起こっており、そういう事があるたびに世間では貴族に対する印象が悪くなる。
だから、庶民の間では極力貴族とは関わらないようにと教えられている。
彼女としては関わりたくないのであろう。
「でも、やらないならやらないで別の面倒事になるからやるしかないんじゃないかな」
「分かったよ」
シエナは剣を取り出しオークに突っ込む。
そして、あと1メートルというところで地を蹴り上げ剣を振りオークの首を撥ねた。
首をはねられたオークは力なく倒れた。
血飛沫をあげながら。
「あんた、大丈夫か?」
その子の顔を覗くと目が鮮やかな青色で鼻は高くどこか子供っぽかった。
「ええ、大丈夫ですわ。
ところであなた方はどなたでして?」
「あたしはシエナっつう冒険者だが」
「冒険者ですの。
先ほどは、危ないところを助けていただきありがとう存じます」
「礼はいいって。
それより、ここはどこなんだ」
「こちらはエルドワール領の密林ですわ」
「エルドワール領だって!?」
エルドワール領はエルドワール伯爵家が支配する領土である。
この土地はレオ達がいたところからかなり離れており馬車でも最低でも一ヶ月はかかるとまで言われている場所である。
常識的に考えて明らかにおかしい。
「あなた方、こちらの人ではありませんよね」
「まあ、そうなんだが……」
「私についてきてくださいまし。
助けて頂いたお返しがしたいのですわ」
「それだと助かるんだが……
本当に良いのか」
「もちろん構いませんわ」
彼女らは付いて行くことにした。