五話
レオ達がダンジョンに入って3時間程が経つ。
今のところ何も出てきていない。
ずっと一本の道だ。
「なぁ。
なんか変じゃないか?」
「そうね」
「そうねじゃないわ!
ここのダンジョン、色々とおかしいんだよ。
トンネルのようにただただ一本の道だ。
あたしの知る限りこんなダンジョンはない。」
「確かにそうね。
あっ危ない!」
彼女らの左から石でできた拳が飛んできた。
エレナとシエナは簡単に躱せたがエルとレオは回避できなかった。
その為、ゴーレムの拳の犠牲になる。
叩き潰されたと思われたがそうはならなかった。
エルが間一髪のところで防御魔法を発動させていたのだ。
薄い空色の壁によってガードされる。
ゴーレムは拳を一旦戻した。
ゴーレムが攻撃を止めると彼らは一斉に目を向ける。
その先には土の人形があった。
土で出来た巨人というべきだろうか。
顔は大きく目や鼻はついていない。
まるでのっぺらぼうのようだ。
肩幅は広く腕だけで2メートルはある。
足は太く手と比べると短いがそれなりに長さはある。
全長は3m以上ある。
「まさか、ここにゴーレムがいるとはな」
「これは本気で気を引き締めないといけないみたいね。
早く倒さないとね。
とりあえず、レオは待っててね」
レオには待機命令が出された。
仕方がないと言えば仕方のないことだ。
彼は弱い。
なので足手まといだ。
それに今の状態で戦闘に参加させるのは少し不安がある。
だからエレナは待っているようにと指示を出した。
「分かった」
とレオは返事をして彼女たちから距離を置いた。
彼女たちは武器を手にとる。
エレナはボウイナイフを。
シエナはツーハンドソードを。
エルは杖を構える。
そして、エルはシエナとアイコンタクトを取りゴーレムに突撃していった。
ゴーレムはそれに気付き拳を上げ一気に振り下ろす。
エレナはそれを紙一重で回避し一気に飛び上がる。
それからナイフを持った右腕に全体重を掛けるように勢いをかけて回転しゴーレムの胸にナイフを突き付ける。
すかさずナイフを抜き連撃を繰り広げる。5回斬った所でゴーレムを蹴り空中でバク宙をすると元居た位置に戻った。
「うそ!?
全く効いてない!!」
エレナは驚愕の声を上げる。
なぜなら、ゴーレムに傷が何一つとして付いていなかったからだ。
だが、シエナはそんなことはお構いなしとゴーレムに突っ込んでいく。
もちろんゴーレムもシエナが突っ込んでくることに気付きパンチを繰り出してきた。
だが彼女はそれを剣で受け流しそのまま乱暴に大きく薙ぐ。
攻撃は入ったがゴーレムにダメージは一切ない。
「くそっ、ダメージが入らない」
「シエナでもダメなのね。
どうしたらいいのかしら」
ーーーーーー
一方その頃レオは。
彼はエレナとシエナの戦いの様子を観察していた。
観察を続けているとあることに気付く。
(このゴーレム、ダメージが入っているんじゃ)
彼にはあることが見えていた。
エレナがゴーレムに攻撃を加えた時にゴーレムに付いた傷が再生していくのを。
これらから再生より速く威力の高い攻撃を当てなければならないと予測する。
「あの~。エルさんちょっといいですか」
「ひゃい!なんでしょう」
エルは突然話しかけられて驚いた素振りを見せた。
「あのゴーレムに強力な魔法を打ち込んでくれませんか」
「はっはい……。
いいですけど少し時間が……」
「なら、僕が囮をします」
「え?」
「流石に囮ぐらいはしないと悪いので」
レオはそう言うとゴーレムに向かい走り出す。
これはいいのだろうか。
何度も言うが彼は弱い。
普通、囮はそんな人がやる仕事ではない。
この仕事は勇敢と無謀の区別もつかないような人がやるようなものではない。
それにも関わらず彼は自ら進んで前に出た。
多分、お荷物にはなりたくないという気持ちからだろう。
当然止められるのだが
「おい、レオ!
何をしているんだよ」
ゴーレムに突っ込んでいくレオを見てシエナが止めようと叫ぶが彼の耳に入らない。
エレナも止めようしたが彼女らがその時にはもう遅かった。
ゴーレムが振り上げた拳がレオを標的として捉えている。
そして、それが思いっきり降り下ろされる。
「危ない!」
エレナはレオを助けるために反射的に体を動かす。
その速さは凄まじいものでこの世で最も速いと言っても過言ではない。
瞬く間ににレオを抱きかかえるとすぐにその場を離れる。
その直後、ゴーレムの攻撃によって土煙が上がる。
次の瞬間ゴーレムの正面から太陽に匹敵する光を纏った部屋を埋め尽くすほどの光の玉が迫る。
それらがゴーレムを焼きつくそうと襲ってきた。
ゴーレムに当たると跡形もなく消し去る。
光の中で体が一斉に塵と化しその塵ですら消されていく。
光が収まるとそこには何もなかった。
ただただ土で出来た空間があるだけである。
「レオ君!
ダメでしょ!
勝手に動いちゃ」
「ごめんなさい」
「私が助けたから良かったけどもし助けてなかったらどうなるか分かっているよね」
「………」
レオは言葉が出てこなくて黙り込む。
「おい、なんか感じないか」
「確かにね。地震かしら」
彼女らがそれを感じ取るとドスンという音とともに天井が崩れ始める。
「まさか、このダンジョン崩れるとかじゃないよな」
「嘘でしょ」
知った時にはもう遅かった。
部屋全体にドドドという大きな音がし天井は次々と崩れる。
追い打ちを掛けるように壁までも壊れ始めた。
彼らは逃げようとするがダンジョンが崩れる方が早く天井が崩れてできるブロックが落ちてくる。
それらは彼らの頭に当たり意識を失う。
彼らが意識を失うとどこからかタンという手を鳴らしたような音が崩壊したダンジョン内に響いた。