二話
「ええと、今回のクエストはここ最近、魔物の出現が増えていて村にも被害が出始めているらしいんだ。
そこで調査してきて欲しいんだってさ」
「OK、分かったよ~。
レオ君、連れて行っても大丈夫なの?
見た感じ強そうには見えないけど」
「そうだなぁ。
一旦、実力を見ておきたいが」
「そうだね~。
実際に戦ってみる?」
「そんなん無理だろ。
奴はそこら辺にいるような少年だぞ。
ただ、勇者になりたいと言う夢だけは本物だが」
「そっか~。
でも、意外とやるかもよ」
「確かに否定はできないな。
なぁレオ。
やってみるか」
「えっ、ちょっと待っ……」
「うん!やる!」
こうしていきなり模擬戦は始まった。
決着はすぐに決まった。
レオが平原に半強制的に連れて行かれて、早速戦いが始まったのだが、相手はシエナ。
彼女は女戦士であり、実力もBランクとそれなりにある。
そんな彼女が相手だからそこら辺の少年よりも弱いレオが勝てるわけがない。
ちなみに何が起きたのかはシエナが突進して殴っただけである。
それでレオは気絶した。
「こいつ、弱すぎないか?」
「まあ、まだ冒険者でもないし」
「それでも、少しは反応することは出来たよな?」
「確かにね~。
見事にクリーンヒットしてたし」
「……」
レオは気を失っている。
彼女たちはレオを起こすために
「おーい、起きろ!」
と声を掛けたり体を揺すったりする。
しかし彼は一向に目を覚まさない。
そして、そのまま半日以上たっただろうか。
「僕、まだ生きてる!
よかった~」
「やっと起きたね」
彼の目の前にはエレナがいた。
どうやら、看病をしていたようだ。
「ずっと寝ていたから心配だったよ」
「ごめん……」
「謝ることはないよ。
元と言えば私たちが原因だし。
そう言えばレオ君は何か得意な武器はないの?」
「うーん」
レオは記憶を探った。
彼は子供の頃に一回弓を習った事があった。
その時に的の中心を三回ほど当てたことを思い出し、その事をエレナに話す。
「へぇ、すごいじゃん!
だったらちょうど私たち後方支援が足りなかったんだよね。
やってくれない?」
「でも、僕弓を持ってないけど」
「そこは大丈夫私たちがどうにかするから」
と言ってエレナは立ち上がってどこかへ行く。
しばらくして戻ってきた彼女の手には洋弓が握られている。
その弓はすらりとしていて持ち手の部分が白、弦は紺色という感じで出来ている弓矢だ。
また矢筒もある。
これは腰につけるタイプだ。
「はいこれ」
レオはそれを受け取る。
「あっありがとう」
「試しに使ってみようか!」
と言って森に入っていった。
森に入るとエレナが
「それじゃあ、あそこにボアがいるから撃ってみようか」
と指を指す。
そこには体長2mほどで、鼻の長い猪がいた。
あれがワイルドボアだ。
レオは弓を構えてゆっくりと狙いを定める。
やがて矢を手から離すと放たれた。
その真っ直ぐと飛びワイルドボアに無事に刺さったが大したダメージを与えることは出来なかった。
刺さった箇所が悪かったのだろう。心臓や脳天なら瞬殺できるが今回当たったのは腹。
しかも、血もあまり出ていない。
ワイルドボアは魔物の中で中の上ぐらいの強さがあるから人間でいう蚊に刺されたのと同じ感覚なのかもしれない。
ワイルドボアはこちらに気づいた。
そして、突進しようとしている。
「レオ君、ここは私がどうにかするから逃げてくれる?」
「でも、そうしたらエレナさんは……」
「いいから逃げて!」
レオは反論しなかった。
何のアクションも起こさなかった。
彼は腰が抜けて動けなくなっていたのだ。
そんなこともお構いなしと言わんばかりに突進してくる。
「危ないっ!!」
というエレナの声と共に彼女は飛び出していった。
レオは彼女の体当たりを食らい吹き飛ばされてしまった。
エレナは地面の上で前転しながら受け身を取った。
「レオ君、もしかして腰が抜けた?」
「そうだよ……。足も動かないんだ」
「へー。じゃあここでちょっと本気を出そうかな」
彼女はそう言ってナイフを取り出しワイルドボアに突き出すように構えた。
「ボアさん、来ていいですよー」
すると、相手は言葉の意味を理解したかのように勢いよく突進してきた。
しかし、彼女は全く動いていない。
ボアが当たりそうになった瞬間エレナは飛び上がりバク宙をすると同時にワイルドボアの脳天にナイフを突き立てた。
そして着地する直前今度は首に向かって横に振る。
これで勝負は決まった。
「すごい……」
「ふふん、すごいでしょ」
エレナは胸を張る。
「私も昔は弱かったけど努力を積み重ねることでここまで強くなったんだよ。
君もいつかはもっと強くなるよ。
それじゃあ、帰ろうか」
二人は宿に帰った。