-竜之翔 -
お初目にかかります。私、梯広 興と申します。私自身の妄想癖を他の人にも知ってもらいたい!という安直な理由で小説活動を始めました。
処女作としまして私が好きな戦国時代を題材としてタイムトラベルものを書かせていただきます。色々と文章面や構成で至らぬ点や矛盾があると思いますが皆様のご指導ご鞭撻戴けると幸に存じます。誠心誠意取り組んでいきますのでコメントや評価もよろしくお願いいたします!m(_ _)m
前書き
かつて先人たちが刻んだこの歴史、この物語はかつての日々をを刻下の若者たちが導き手として駆け抜けていく物語である。
序章 龍の稚児 壱
薄暗く馬小屋の様な空間の中、牢に繋がれていた青年は目覚めた。しかし、ここは刑務所の塀の中ではない。ましてや彼は盗みや暴力に及んでもいない、極々普通の青年である。では何故彼はこんな土牢に閉じ込められる羽目になったのか、それは2日前にまで遡る。
「あっっつ~」
2023年、夏。山形県米沢市は盆明けのむせ返るような暑さに見舞われていた。今年の夏は去年よりも暑い、米沢では最高気温39度近くまで達している。それでも青年、御堂孝範は藪を押しのけながら趣味の山菜採りに興じていた。彼は大学最初の夏休み父方の祖母の家がある米沢へと帰省していた。彼の実家は中学入学と同時に工務店に勤務している父の転勤により仙台へと引っ越し、お盆前後は祖母の家でのんびりと過ごし、子供の頃祖父に連れていって貰った山で山菜を取ることが孝範の夏のお決まりとなっていた。去年は受験勉強のため夏は祖母の家でクーラーの効いた部屋で数学の二次関数に相手に壮絶な死闘を繰り広げたので今年こそはと意気揚々と藪だらけの裏山に繰り出した。
山に入ってから3時間弱汗まみれになりながらフキやヤマモモなどを背中の籠に詰めて帰路に着こうと歩を進める、そこに彼の眼に寂れて手入れの行き届いていない祠が飛び込んできた。
普段ならばそんなものには眼もくれずに山菜を集めている孝範であったが今回は何かが違う、何か形容し難いが非常に異質なモノを感じる。思わず脚を止め、まじまじと見つめる。なぜか引き寄せられる。この得体のしれないモノに対する恐怖、高揚、期待。この場を離れなければという思考とは裏腹に脚は歩みを止めることはない。そして
手が触れる直前ーー
「うわあぁぁ!!!!!!」
その刹那、彼の身体を眩い光が包み落下感と共に意識が途絶えた。
しばらくして、目が醒めた孝範は痛みを感じつつ謎の違和感と共に土を払いながら、帰路に着けた…はずだった。何かがおかしい、山にいても聞こえるはずの車の音が聞こえない。嫌な予感は現実となって飛び込んでくる、山を降りると見慣れた景色はどこにも無かった。電線や車はもとより太正時代からあったという古ぼけた祖母の家も無く、畑の倉庫になっているような小さい家が点々と並んでいるのみであった。
「は??」
そこから孝範は近くにいた畑仕事をしていたおっさんとの怒涛の鬼ごっこの末連行されてしまった。
1時間後、孝範はどこぞの時代劇にありそうな屋敷に連れられ、代官様と呼ばれる和服の男に詰問されていた。自分はあの山の麓の人で山菜を採っていた大学生であるなどを伝えても1ミリも理解されない。代官様とやらは部下の男たちに指示を出し、やって来た男達に孝範は縄で縛られ、外へと連行されていった。孝範にはもう抵抗する気すら起きなかった。しかし、時代劇や大河ドラマなどでしか見たことがない刀、和服の男達を見て、全く持って信じがたいが一つの仮説、いや確信があった。
ーーここは令和じゃない、過去に飛ばされた?ーー
歩かされること1時間半、余所者以下一団は立派な門の前に着いた。外側から見て恐らくは城、そして小学生の頃祖父に足繁く連れていって貰った米沢城だろう。現代の米沢城は神社等になってこのような門はない、やっぱり過去に送られたのか…などと考えているとガタン!と音を立てて大門が動き出す。面妖な余所者は、弁解の機会も与えられぬまま、馬小屋にも劣るような牢に入れられ、2日が経った。
相変わらずうだる様な蒸し暑い朝だ。土の上に敷かれた藁の束みたいな蒲団?の上で孝範は目が覚めた。「朝起きたら家に戻ってないかな~」などと昨日と一昨日は思いながら寝て起きたが3日目になってくるともはや現実と受け入れるしかないようだ。もっともこの風通しが絶望的で服が張り付くような蒸し暑さから認めたくはないが頭では現実であると理解はしていた。
「なぁ、いつ出してくれるんだ?」
孝範は守衛の侍に聞くが答えは返ってこない。しばらくしてパッサパサの雑穀の食事が出され、これを嫌々ながら掻き込む。相変わらず不味い。皿を下げて何をすることもなく壁を見ながら何の気もなしに手の甲を見る。
「ん…?」
手の甲に昨日まではなかった模様が描かれている。それはまるでタイマーのようにかなりの数の目盛のような形の棒が円状に並んでいる。なんだこれ??と考えていると突然牢の扉が開く。三日前の代官が牢の前まで歩いて来る。
「輝宗様のお帰りだ!お前の見分をしていただく」
「へっ?輝宗ぇ!?」
・・・口が滑ってしまったのは間違いだった。代官は烈火のごとく怒り、孝範は襟首を掴みながら本丸へと連れていった。
米沢城本丸 評定所
引き連れられた孝範はこれまた時代劇で見るような白洲へ連れていかれ、座らされる。そこには代官のような身なりの人物や更に格式が高そうな人物が10人ほど座っており、孝範の後ろには槍で武装された武士が8人ほど控えており逃げ出そうものなら串刺しは必至という剣呑な雰囲気をありありと出している。
しばらくすると、過去で見てきた人物よりも身なりの整った男性が家来と思しき男に促されつつ座所へ就いた。その途端、脇に控えていた家臣一同が深々と頭を下げる。そして、孝範の隣に控えていた代官も孝範の頭を押さえながら頭を下げる。
礼を終えたところで当主のすぐそばで控えていた男が発言する。
「これより、右の咎人の裁定を始める、まず○○村代官より説明を」
代官は表情を変えることなくこれまでの経緯、孝範の陳述をつぶさに報告した。
「次に、咎人による説明を今一度命ずる。」
それを聞き、孝範は自分がなぜここにいるのか、何者であるかを説明する。
それを初老の当主は黙って聞いていた。話を聞き終わり、男性が口を開く。
「お主、未来から来たということは誠か?」
突然艶やかで低い声色で尋ねられ、驚きつつも答える。
「はい」
「では、そなたは何をしに来た?」
分からない、この人には嘘をついてはいけない。そう思った。しかし、何があっても生きて令和へと帰らねば…
暫くの問答の末、大半の問いに対しては「分からない」と答えてしまったため輝宗は頭を抱えつつ
謎の来訪者に対して輝宗は
「この家に置くためには種々の苦難があるがお前はそれでも良いのか?」
「もちろんです!」
間髪入れずに答える。それを聞くと同時に輝宗は目を瞑りながら考え、そのまま
「この者を鬼庭家の預けとする」
と裁定を下し奥へと下がっていった。
刻の史序章をお読みいただきありがとうございます。これから刻の史始まります。最初は独眼竜伊達政宗からです。
なお、刻の史は史実を基にしたフィクションです。なので少し史実から逸れたり、有り得ない展開もこれから出てくるかもしれません。そこは大目に見てもらえると嬉しいです(笑)。
私事にはなりますが就活が終わり、大学生活も大詰めとなっております。卒論や社会人生活で更新は滞ることもあると思いますがこの作品以外にも5作品ほど構成を練っております。そのどれも完結させるつもりなのでお付き合い戴けると幸いです。
多少のネタバレにはなりますが今の段階で12人くらいの時間遡行者を主軸にすると思います。自分でも手探り状態で進んでいますが皆様どうかよろしくお願いいたします!!