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プロローグ


 打ち上がる色とりどりの花火。

 この日を祝福するかのように咲き誇る花々。

 歴史と風格を受け継ぐ豪奢な神殿には、厳かな空気が流れていた。

 だが、それ以上に室内を満たすのは人々の笑顔。


 この日、ある大国の若き王が、遠く離れた地から花嫁を迎えた。

 聞けば王が一目惚れし、是非にと強く懇願するほどに求めた花嫁だという。

 特殊な種族ゆえに、結婚はまだまだ先だろうと思っていた国民は早急に決まったこの式を喜び祝った。


 その(くだん)の花嫁、グリレス国の第一王女、ミレーユ・グリレスは、誰もが羨むような美しい純白のドレスに身を包み、色彩豊かなブーケを手にバージンロードを進む。

 足取りはなんの迷いもなく凛としており、観衆の瞳にもたじろぐ様子はない。


 しかし、隠されたベールの下では――――居た堪れなさに泣きそうになっていた。


(ど、ど、ど、どうしたらいいの? 大国だとは知っていたけれど、まさかこんな盛大な式だったなんて……。急なことだから簡素に執り行うと聞いていたのに。いえ、そもそも婚礼の儀は夏至の日に執り行われるはずでは??)


 まさか、到着してすぐにウェディングドレスに袖を通すなど予想外すぎた。


 そんな内心パニック状態の心境でも、足だけはなんとか前に進ませる。必死の思いで花婿の横まで到着すると、指揮を執る聖職者の厳かな声が朗々と響きはじめた。誓いの言葉が始まったのだ――――。


 ミレーユは流れる冷や汗をぬぐうこともできず、呆然と立ち尽くす。


(せめて、お相手の方と一言くらいご挨拶する時間くらいはいただきたいのですがっ!?)


 その時間さえあれば、きっとこの()()()()()()()に気づき、結婚式自体がなかったことになると信じていたのだ。


 だが予想空しく滞りなく進行していく式に、ミレーユは焦りに焦った。


(ち、ちょっと待って下さい……)


 知らされていたこととまったく違う展開に、どれだけ心の中でストップをかけても、それを唇から発することはできない。ここは異国。しかも完全アウェーだ。


 それに正直、()()を誰にどう伝えればいいのかも分からない。

 せめてここに味方となるような、ミレーユの心中を知る人間が一人でもいれば事態は違っていたのかもしれない。


(できるだけ巻き込む者は少ない方がいいと、単身で赴いたことには何一つ後悔してないわ。後悔はしていないけれど!!)


 グルグルと回る思考の中、茫然としている間にも式は終盤。


 目の前には、“神の種族”ともいわれる青年王がこちらを向き、ミレーユのベールを持ち上げた。



 ――――最初に目に入ったのは、彼の煌めく黄金の髪に、灼熱の瞳。



(エミリアと同じ、深紅の瞳……)


 実妹と同じ瞳の色。


 だが、彼の色はもっと濃く、鮮やかだ。

 その瞳の美しさに見入ってしまえば、溶けて焦がれてしまいそう。


(話には聞いていたけれど、本当に神の化身みたいな方だわ)


 まるで、他人事のような感想がこぼれる。


 彼から溢れる魔力は底が知れず、まるで大地に包まれているかのように強大で強固。畏敬の念を起こさせるような圧倒的な存在感を前に、いつものミレーユなら立っていることもままならなかっただろう。


 しかし、すでに緊張は限界突破。ミレーユの感情の振子(ふりこ)は、もう完全に壊れていた。


 一切の感情が表情筋に伝わらず能面のように動かないミレーユとは違い、彼はミレーユの顔を見てひどく驚いたように、その灼熱の瞳を大きく開いた。


「――ッ」


 小さく零れるのは呼吸音にも満たない微かなものだったが、だからこそ彼の動揺を強く感じ取った。


 ミレーユは、地べたに伏せたくなる衝動を必死に押さえ、心の中で強く謝罪した。


(あああぁぁ、申し訳ありません! こんなことになってしまい、本当に申し訳ありませんっっ!!)


 彼が驚くのも無理はなかった。


 なぜなら、彼が強く望んだ花嫁は()()()()()()()()()()()()()()()()()――――。


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勘違い結婚
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