2.時の始まり
…3年くらい前になるかな。
わたしは幼なじみの准が好きでした。
仲がいいんだか悪いんだか、よくケンカはしてた。
いつも大きなケンカにならないし、ふざけてるだけってお互いわかっていたから、ケンカと言ってもそれはそれで楽しかった。
気まずくなることなんてなかった。
なのに、気まずくなることが起きてしまったんだ。
3年たった今でさえ、交わす言葉は少ない。
こんなに話しかけにくくなるなら、無理にでもあの時取り返せば...
それともなにか上手い言い訳でも考えれば良かったのかな。
准はもう何も気にしていないんだろうな。
たまに何か用事があると話しかけてくるけど、准にはあの時のことなんてなかったかのような振る舞い。まぁ、それは准に彼女がいるからでもあるんだけど。
「運命のサイコロを振る」?
いいえ。
わたしにとっては、これからを決めるものは1つの消しゴムだった。
あの消しゴムがなかったなら、今どうなっていたんだろう。
…今と変わらないかな。
それとも届かない想いを隠したままでいるのかな。
准は、どう思っていたんだろう。
結局、一言残してそのままになった。
次からは何もなかったかのように接してきたあの人..
あの時は…確か英語の授業。
この時点ではまだ気づいていなかったけれど、わたしの運命が動きはじめていたと思う時。
わたしが落とした、1つの消しゴムで…