1.プロローグ
あのね、覚えてる?
わたしが…わたしがあなたを見てたこと。
あなたの笑顔のそばにいられたらと願ったこと。
…覚えてるかな。
覚えてないかもね。
わたしだって、今思い出したんだから。
忘れ去ろうとした過去。
『あれ』をみてまた思い出したの。
「わたしはあなたが好きでした」…って。
あなたに見られた。
でも嫌な気はしなかったよ。
いずれは伝えるつもりだったから。
あの時あなたに見られたからこうやって思い出すと悲しいのかな。
でも…
あの時あなたに見られたからわたしの気持ち、あなたに知ってもらえた。
見られて良かったのかな。
それとも悪かったのかな。
今でもわからないよ。
少し悲しい。
心に何かが足りなくなっちゃったみたいで。
それでももう泣き寝入りすることなんてない。
頭が痛くなるまで考えたりしてない。
「思い出にしたくない、ずっと忘れないで刻み付けたい」
そう思ってたけど、わたしはわたしで幸せの切符掴むんだ。だってずっとそうやってても寂しくなるだけだった。
忘れたくないけど、忘れたい。
そう思って来たから、いつの間にか少しずつ忘れてた。
あの時はあんなに好きだったのにね。
“I cannot use up an eraser.”
だってその前に終わりを告げた。
無意識の内にも、思い出にしてしまった過去を、少しだけ、また覗いてみようか。