第6話 ダンジョンへ
俺たちは今、名古屋へと向かう新幹線の中にいた。
「思ったより平気だったな」
「一ヶ月経ってますし、アレの効果もでてますからね」
一応帽子を被ってきたのだが、案の定俺がランカーであるとは気づかれなかったので、ひとまず安心した。
「凄かったぞこれ、自分でもびっくりした」
「だから言ったでしょー。みんな無名さんの事気になってるんだって」
呆れ気味に彼女いうアレとは、SNSのことである。
どうせいつかは公にするならアカウントは要りますよね、という彼女に言われてやってみたのだが、その反響は凄かった。
――自分から出すと、意外と外野は静かになるもんです
そういう彼女に従って、ある程度自分の事を公開してみた。おかげさまで外には出歩けるようになったが、またもやネットが大騒ぎになった。
「始めた時はどうなる事かと思ったが、功を奏したな」
「ですねー」
俺がSNSを始めた時に起こった問題、それは本人であると信じられなかったことだ。
俺が始める前から既に俺を名乗るアカウントがいくつも存在しており、謎の無名ファンを名乗る人達から嘘をつくなとむちゃくちゃ叩かれた。
どうしようかなぁと思っていると、彼女が動画を上げてみては? と提案してくれたので、動画を上げたのだが。
「まさか炎上するとは思わなかった」
「まー実際は本物ですし、炎上ではないんですけどね」
とりあえず証拠として頭上のダンジョンランキングを映した動画を上げたら、やれ合成だの編集だの言われて信じてもらえなかった。
しょうがないので複数魔法を使った動画を上げると、今度はCGだろと言われた。しかし、有識者がこれはCGにしてはリアルすぎると認め始め、ついには有識者と無名ファンの口論になるという。
この論争がきっかけで世界中に俺のアカウントが広まったのは喜んでいいのか悪いのか……。
ちなみに、他のランカーもほぼ全員SNSをやっていたりする。理由は俺と同じように活動しやすくするためという人もいれば、ただ単純に有名人として注目を集めるためにやっている人もいるようだ。
♢
出発から約二時間、俺たちは名古屋ダンジョンに到着した。
既に今日から泊まる予定であるホテルに荷物は置いてきたので、いつでもダンジョンに行ける状態だ。
「結構にぎわってるな」
ダンジョンの入口付近にはいくつか建物が立っており、そこに冒険者の格好をした老若男女が出入りしていた。
ドロップアイテムの査定や買い取り、装備の耐久値など、鑑定スキルを持っている協会のスタッフがあそこで作業を受け付けているようだ。
他にも、即席パーティーメンバー募集みたいな感じで集まっている所や、情報交換の場なのか軽い食事ができるスペースもあった。
「前来た時とはだいぶ違うな」
「あの時はダンジョン踏破がかかった攻略でしたからね」
真奈と話しながらダンジョンへと近づいていくと、何やらひと際盛り上がっている人だかりが目に入った。
「ランカー89位の大口さんが来てるってよ!」
「まじっ!? どこどこ!」
人だかりに向かっていく人の話し声が聞こえてきた。同じように騒ぎを聞きつけた人達が駆けていくのも見える。
どうやら俺達以外にもランカーが来ているようだ。
「あーゆのはよくある事なのか?」
「時間帯にもよりますが、週に二、三回は誰かいますね」
冒険者の中でもランカーと呼ばれる上位二桁の実力者。彼らの人気はそれは凄いもので、ランカーとは呼ばれていないが三桁でも十分人気がある。
基本的に公開されているダンジョンランキングは世界ランキングなため二桁までが賞賛されているが、非公式の国内ランキングでは三桁でも十分上位なのだ。
「まるでアイドルだな」
「冒険者の憧れですからね。実質アイドルとそう変わりませんよ」
人だかりを避けながら、ようやくダンジョンの入口にたどり着いた。
入り口付近には、前回俺が入った時にはなかった簡易のテントらしきものが設置されており、そこにそこそこの人数が並んでいた。
「あーよかった、結構すいてますね」
「あれでも少ない方なのか……」
軽く五十人はいるのではないか? 思ったよりも進むスピードは速いので、そんなに待ち時間はないようだが。
二人で並んで待つこと十五分。その間に彼女からテントの中の事を聞いた。どうやらあそこでダンジョンランキングの確認を行っているらしい。
「じゃ、32層で会いましょー」
「了解だ」
彼女が先に入って、その後に俺が入る。
協会のスタッフの前で頭上を意識すると、スタッフの人が驚いたような顔を一瞬浮かべたが、すぐに表情が戻る。
そういった気配りは慣れているようだ。
無事ダンジョンランキングの更新も終わり、俺は入り口横にあるテレポートゾーンに立つ。
32層を思い浮かべると、体に浮遊感が訪れた。
さて、久しぶりのダンジョン探索だ。
名古屋ダンジョンの最前線である32層に、俺の体はテレポートした。




