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エピローグ2
何も存在していないはずの空間で、二つの声――否、意思が響く。
「いやー! 彼、面白いねー!」
「すごいですね、良く精神崩壊しないものです」
「自分の中の記憶を嫌うって、なかなかできたもんじゃあないよ!」
「ほぼ二重人格ですよね、あれ」
「やっぱり人間は不思議がいっぱいだねぇ」
「彼に関してはきっかけを作ったのは我々ですけどね」
「ちょっと失敗しちゃったからねー」
「可哀そうですよ? ほんとに」
「そうえば、あいつの方はどうなの?」
「どうでしょう? まだ少し弄ってるみたいですし」
「いつ始まるのかな、破壊期」
「まだ先なんじゃないですかね」
「見せてほしいねぇ、可能性を」
「期待するだけ無駄だと思いますが」
「まぁまぁ、それならそれでしょうがないさ」
「あいつと違って、私たちは観察することしかできないんですからね」
そこにあるのは、まさしく意思疎通のみであった。