エピローグ1
ドロップアイテムはやはりというかなんというか、スキルオーブだった。
「回復魔法か……」
「いやいりませんよ!? なんでこっち向くんですか!?」
この攻略はミリタリーが始めたことだ。ボスが回復スキルを使うところまで削ったのもミリタリーだし、俺がやったことはとどめを刺しただけなのだ。
そう彼女に説明すると、思いっきり反論された。
「いやいや無名さんが来る時にはボス全快でしたよね? なんならパワーアップした状態での戦闘開始でしたよね?」
「まぁ、そう言われたらそうなのだが」
「なら! これは無名さんが使っちゃってください!」
「後で返せとか言われない?」
「さっきまでかっこよかったのに急に女々しいっ!」
気のせいだろうか、今……若干褒められた気がする。
彼女の方を見ると無意識だったのか、少し顔が赤くなっていた。
「だ、大丈夫です! 私がなんとか言っときますから!!!」
「あ、はい……では恐縮ながら、頂戴しますね」
「どうぞ!」
勢いに押されて貰ってしまったが、まだ使うのはやめておいた。
何があるか分からないしね。
♦
俺たちはボス部屋から出て、階層始め付近にあるテレポートゾーンに向かっている。
行きとは違い、とくに急ぐ必要もないのでゆっくり歩いていると、彼女がおずおずと俺に話しかけてきた。
「もしかして無名さん……無理やりダンジョンに入りました?」
「無理やり、というと?」
「いや……その、ダンジョンランキングの確認が……」
「それなら言ってきた」
「え! 言っちゃったんですか!?」
何を驚いているのか分からないが、そうしないとスムーズに入れなさそうだったのだ。一刻を争う時にいちいち考えていられず、勢いで公言してしまった。
「すみません……私のせいで……」
落ち込む彼女を見ていられなかった俺は、空気を賑やかすことにした。
「気にするな! 確かに公開はしたが、後悔はしていない!」
「……」
あんまり良くなかったっぽいわ、言ってちょっと後悔した。
テレポートゾーンに着いたところで、俺は彼女に忠告しておいた。
「勝手にアイテム使ったし、ランキング公開したし、なんなら後ろで呼び止められてたのも全部無視してきたから……とんでもないことになってるかも」
「え、えぇー」
「まぁなんとかなるでしょ」
とりあえずこの階層に誰も来ていないのだから、あちらで誰かしらが仕切っているのを期待している。
彼女の方を見ると一気に気が重くなったようで、少し顔色が悪くなっていた。
「うわぁ……きっと皆もいるだろうし……。無名さん、なんか面白い話して気を紛らわしてください」
さっきのボケを気にしてか、彼女は救いを求めるようにこちらを見てそう言った。
挽回のチャンスだ。先程は滑ってしまったからな。
「面白い話か、そうだな…………実は俺、
前世の記憶があるんだ」
これにて、人間嫌いと破壊世界、第一章終了となります。
二章の繋ぎでもう一話、エピローグ2を投稿します。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!そして、感想、評価、ブックマークをして下さった方々、とても励みになりました!感謝感謝
さて、やっと主人公がダンジョンに入れますね。
第二章を楽しみに待っていただけるとありがたいです!