表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/52

第27話 新たなシステムと靄

 今日もネットニュースを確認していると、気になる内容があった。


「ダンジョンに、テレポート機能だと……?」








「そうですね、使ったことありますよ?」


 彼女がダンジョン攻略で忙しいのは知っている。それならばテレポート機能についても知っているかなと聞いてみたのだが、案の定使ったことがあるそうだ。


「なんていうか、ジェットコースターの浮遊感に似てますね」


 無重力状態にでもなるのだろうか。少し試してみたい衝動に駆られるが、俺はダンジョンの中に入れないので無理だ。


それにしてもテレポートか……。


 やっぱり超能力の代表と言ってもいいテレポート、瞬間移動ってやつなら挑戦したことがある。  ただ、前にも言ったと思うが魔法はイメージと感覚が大事なので、未知の体験を想像するのはなかなか厳しいものがある。その時は結局諦めたが……そうか。テレポート機能が、ねぇ。


 どんな仕組みなのか科学的に証明してほしいところだ。

 一瞬で移動するなら移動先にある物質、それこそ空気だって一応存在があるので、その辺が合体するわけだ。となると、もしも移動先に魔物がいた場合、魔物と人間のキメラが完成することになるな。


おっと、魔法を科学的に語るのは野暮だったな。


「にしても、このタイミングでまた随分な変化だな」


「ダンジョンランキング非表示機能もそうですが、私たちに()()()()()変化ですよね、実際」


「ますます謎が深まるばかりだ、何故こんな俺たちが求めそうなものを用意する?」


 ダンジョン攻略において、階層が下に行けば行くほどその強さは上がっていく。そして、最前線――今までに攻略した階層で一番深い所に行くには、その階層までにある全ての階層を倒していかなければならない。


 そもそもダンジョンでは普通の魔物もボス魔物も復活をするので、なかなか攻略が進まないのだ。だからこそ、移動手段についてはかなり議論がなされていた。

 いかに最前線まで無駄なく行けるか。ゲームの世界ならではの移動手段、それこそテレポート機能だって一度は必ず期待されたはずだ。


「でもほんとに助かりましたよ、今までは一回の攻略で相当な費用と時間が掛かっていましたからね」


「まぁ、そうだろうな」


 この機能のおかげで世界中のダンジョン攻略が急加速すると思われる。今のところ一番ダンジョン攻略が進んでいるのはアメリカだ。次いで中国、その他四国、日本の順番である。

 そんなに大差があるわけではないが、やはり新アイテムの発見というだけでニュースになる時代なので、一番と二番での差は大きい。


「これで、低階層の人数制限もなくなるかもな」


「そうですね、既にそういう結論になっているらしいですよ」


 人数制限、というのは勿論ダンジョン内での話だ。

 俺のいたダンジョンとは違い、通常のダンジョンはボスを討伐しても復活する。攻略するには低階層から順番に攻略していかなければならず、それこそ一階層や二階層はすごい人数が集まる。

 そのため、ダンジョン協会は人数制限を設け、密度が高くなるのを防いだのだ。



「また差が開くかもな」


「……」


 人数制限については各国が連携し、揃って執り行っていた政策だが、これに一番恩恵を受けていたのはここ、日本だ。

 領土が狭く人口が多い、つまり人口密度が高い国ほどひとつのダンジョンに挑む人数が増える。

 日本のダンジョン協会もよく各国とこの取り決めを約束できたものだ。他国からしたら足枷でしかない。


 黙り込んでしまった彼女の気持ちもわかる。このテレポート機能のおかげでダンジョン攻略は飛躍的に効率が上がるというメリットを享受できるが、同時に他国との競争に置いて行かれるというデメリットも抱えなければならない。


 一般の冒険者ならともかく、国家機関所属の隊員としては素直に喜べない変化だろう。







 そうえば、あんまり彼女の部屋に訪問したことがないな。

 彼女が俺の部屋に来ることはたまにあるが、俺から行ったことは一度もない。


「まぁ、とくに用事が無いからなんだけどなぁ」


 彼女は俺の事をいつも気にかけてくれている。きっと知り合いが少ない……というか真奈さんしかいない俺の事を心配してきてくれるのだろう。


優しいからな……


 彼女――如月真奈は優しい。


 常に人の事を考えて行動しているし、あんまり愚痴や暴言を言わない。だからだろうか、自分を少し追い込んでいる節があり、俺が言うのもなんだがちょっと心配だ。

 


けれど……






 

 誰かのために頑張る姿を見ていると、何故だが無性に気分悪くなる時がある。

 自分の悪い部分が(うごめ)く感じだ。

 俺の捻くれた心は筋金入りかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ