第23話 情報収集と……
今日も今日とて情報取集だ。最近は、携帯片手にネットをうろついていれば、大体の情報が手に入る。
便利な時代になったなーと思いつつ、これからダンジョン資源でますます便利になっていくと言われているもんだから、想像ができない。
いつものサイトを開くと、冒険者人気ランキングがちらっと目に入る。やはりというかなんというか俺が一位にいるのは変わらないのだが、二位の戦場の女神さんもこのところ変わらずだ。
「いやだわぁ、こういう名前つけられるの」
戦場の、は分からないでもないが……「女神」だぜ?
まぁ、人によってはかっこいいと感じなくもないか。
「本人が否定しないという事は、気に入ってるのだろうな」
あんまり人のデータを調べる趣味は無いので名前だけ頭に入れておく。今後、同じ人気冒険者として付き合いが生まれる可能性もなくはないしな。
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現在、俺は市内で一番大きいと思われる図書館に来ていた。
ここに来るのは二回目で、読みたい本の場所もある程度分かっている。
目的は、勿論ダンジョンについての知識を得るためだ。ネットニュースでも沢山の情報を得られるが、どうしても信ぴょう性に欠ける。
正式に出版された本ならば、実際の真偽はどうあれ一応ひとつの仮定として、ある程度賛同されている場合が多い。
俺は取ってきた本を机に置く。題名は「ステータスの不思議」というなかなか分厚い本だ。よくもまぁ未知のシステム相手にたった1年でこれ程書けるなと思いつつ、その内容に期待が高まる。
第一章、ステータスの誕生ねぇ……
その後、二時間ほど読んでいたら携帯に通知が来た。相手は真奈さんだ。
『ダンジョン攻略で部屋を空けるので、しばらく不在にしますねー』
時々、こんな内容のメッセージが俺に届く。彼女は俺の唯一の知り合いだし、彼女も俺の事を気にかけてくれるので、何かあっても俺は彼女にしか言えない……いや、言わないのだ。
きっとダンジョン庁とやらのお偉いさんが俺のことを引き留めるべく、彼女に色々気にかけるよう命令しているのだ。
いつも忙しそうだし、たまには労ってやりたいんだが……
前々からずっと感じているのだが、俺は彼女に与えてもらってばかりで何も返せていない。唯一できるダンジョン攻略も現状は無理だし、どうしたものか。いっそ料理でも振舞うか?
こういう、「相手を気にかける」ってのはどうにも慣れていない。今まで友人や知り合いは作らなかったし、前世でもそういう関係の人はいなかった。
女心なんてもっと分からんぞ……俺は。
とりあえず今読んでいるステータスの不思議と、料理の基礎を学べる本を借りる事にした。帰りの道中で彼女に返信をしておき、ついでに食材の買い出しにスーパーへ向かった。
「逆では?」
スーパーの買い物を終え、帰り道を歩いていてふと気づく。
俺が彼女のために何かをして、面倒に感じるか否かはこの際どうでもいい。むしろ最近は彼女への貸しを返すことが趣味になっているまでもあるので、面倒とすら思っていないかもしれない。
俺が彼女に何をしてあげられるか。
俺にできる事、それは料理という結論に行きついていた。
「男が女に料理を振舞って、果たして彼女は喜ぶのか?」
よく考えたら、俺は彼女と出会ってまだ日が浅い。彼女はいつも明るく接してくれているので、そこにダンジョン庁の思惑があろうとも、一応は信用している。
少しは仲が良くなったとも思う。
さて、問題はここからだ。
これでも俺は恋愛小説をかじっていた男。女心は分からずともそれなりの振る舞いは知識として知っている。
例えば、そう。「男女の関係発展には、料理を振舞うと良い」
逆なのでは? と思った。普通、振舞うのは女性側で、振舞われるのは男性側なのでは?
この際、やろうとしている事が好きな相手にするような事なのは置いておく。何故なら俺がそうするのは彼女に貸しを返すためであり、そこに恋愛感情は無いとはっきりしているからだ。
どうせ振舞うなら、もう少し上達してからだよなぁ……
とりあえず、料理を振舞えるレベルに達していないのは自覚しているので、もう少し頑張ろうと思う。
少し、変わっているのかもしれない。
誰かのために、何かをしてあげる。
以前の俺なら絶対にしないことだ。
きっと、良い傾向なのだろう。
人間嫌いはいまだに治らないが、少しずつではあるが俺は人に歩み寄っている。
ダンジョン攻略がいい気晴らしになったのだろうか……
前世で経験したことを忘れたわけではない。人間が簡単に信用できないのも変わらない。
でも最近は、嫌な思考が薄まってきている気がする。
結局のところ、気の持ちようなのだろう。
そんなことをぼんやりと考えていた。