第12話 戦場の女神
私の所属しているミリタリー第二部隊は、一般応募から入った人と元自衛隊員が混在する部隊だ。他にも二つ部隊があり、ミリタリーは三つの部隊に分かれている。
第一部隊は元々国の管轄で動いていた組織で、そのほぼすべてのメンバーが元自衛隊員や消防隊員で構成されている。
第三部隊は逆に一般人が多く、それぞれの役目は前者が積極的なダンジョン攻略、後者は宣伝の役割を担っている。
宣伝というのは、「冒険者は職業として認められていますよ」、という国のお墨付きがあるのを示すという意味合いで、彼らもちゃんとダンジョン攻略に貢献している。
私たちはその間なので、両者の役割をサポートしている感じだ。
【戦場の女神、如月真奈に突撃インタビュー!!!】
そんなネットニュースを見ながら恥ずかしさに目を瞑る。ここ数日で、様々なネットニュースサイトでちらほらと自分の記事が載るようになった。
前々から、宣伝頭として出ないかという申し出は沢山来ていたのだが、うちの隊長が断ってくれていた。
「如月君はまだ若いし、宣伝なんてしなくても他に代わりがいっぱいいるさ」
人気になると大変なんだよ? 如月君可愛いからおじさんは心配なんだ、と冗談めかしていう隊長の言葉はどこまで信じていいか悩んだが、私の事を心配してくれて言っているのは十分伝わってきた。
大林隊長は優しいと評判だ。元々警察官で、評判も良く、噂では捨て子を発見した時にそのまま育てようとしたこともあるそうだ。
ミリタリーの隊長に任されてからも部下の信頼は厚い。第一部隊や第三部隊と違って隊長は戦うことができないが、ダンジョン庁大臣の中村という方が古くからの知り合いだそうで、直々に任されたそうだ。
私のミリタリー入隊の最終面接も大林隊長が面接官で、とにかく懐が広いというか、優しさの化身のような人だった。
そんな隊長は最近元気がないそうで、知り合いによるとダンジョン攻略速度の低下に頭を悩ませているらしい。偶然、中村さんと隊長が話しているところを見かけたそうだ。
私に何かできる事はないかと伝えると、隊長は冒険者人口増加のために宣伝をして欲しいと呟いた。すぐに、忘れてくれといったが、私は以前から受けていた申し出を思い出し,すぐに行動に移した。
「こんなことになっちゃうとは思わなかったなぁ」
たしかに私は日本ランキング2位だ。宣伝者としてはこれ以上ない物件だろう。
戦場の、までは理解できるが女神って……。私の事を過剰に宣伝しすぎではないかと切実に思う。
ランキングは各ダンジョンの入り口で協会のスタッフがデータを取っているのでほぼリアルタイムで変動しており、私はこの前の攻略時に申告し、ダンジョン世界ランキングには12位と表示されている。
私の宣伝ページの隣には、同じ広告会社の記事が取り上げられていた。
【ダンジョンランキング1位は何者か! マフィアやギャングという噂も!?】
ダンジョンランキング1位は、計測が始まってからずっと空欄である。噂では、中国やアメリカの政府が匿っているというが、匿う必要はあってもランキングを隠す必要はないだろう。
世界ランキング1位だ。しかも、ダンジョン発生から1年近く経っているのに一度も変わったことがない。そんな実力者を自国が確保していると公言すれば、他国に対する抑止力ははかり知れない。
世間でもこの話題で常に盛り上がっている。ネットではどんな人物か予想が飛び交い、可能性のある人物の住所や名前が特定されたりと問題になるほどだ。
「日本人だったらいいのに……」
各国のダンジョン関係者や政府も調べに調べているが、依然として何の情報も得られていないという。
ただ、その中でも日本人の可能性は限りなく低いと言われている。日本のような一人一人の保証がしっかりしている国は、調べれば全ての人の所在が露わになるからだ。
日本の政府だってその人物を懸命に探したが、ついぞなんの情報も出てこなかった。
「真奈ちゃん、何見てるの?」
話しかけながら画面を見るためひょこっと顔を覗かせてきたのは、同じく第二部隊所属の鈴原 恵美さんだ。同じ部隊で数少ない女性同士なので、割と砕けた口調で話してもらえる。
「あぁ! それ真奈ちゃんの記事ね! 私もみたわー」
「恥ずかしいからあんまり見ないでくださいよっ!?」
「うちのエースが輝かしく取り上げられてて、お姉さん嬉しー」
「もうっ!」
ニヤニヤと笑みを浮かべる恵美さんの肩を軽く押しのけ、 ネットニュースを閉じる。
「いつまでも見ていられるわ~」
「家で勝手に見てください!」
「真奈ちゃんが冷たいー」
しくしくと泣く振りをする恵美さんに少し罪悪感を覚えるが、今のは私悪くないと思う。この前も私の記事でからかわないでってあんなに言ったのに!
感想、高評価、ブックマーク、本当にありがとうございます!泣
感謝感激雨あられ