第三話
ゼロを纏う、俺の武器、デスサイス。
これで刈ったものはゼロを纏って、「1」の世界から消える。
命を刈り取る、死神の大鎌。鎌から闇があふれている。ゆらり、ゆらりと、闇色の鎌を闇が彩る。漆黒の鮮やかさを、目の当たりにする。…いい色だ。こんなにも深く、暗い、闇の色。愚かしい人間どもをすべて塗り潰すのは、この色だ。醜い人間どもをただ一色の中に封じ込めるのは、この色だけだ。
目障りなものはすべて、俺が狩る。
目障りなものの存在を、俺が刈る。
この世界の「1」から「0」になり果てた存在は、この世界で「0」である、俺の中にある『1』となる。
「デスサイスで仕留めた存在のすべてが、ハジメの中に吸収されます。」
「吸収したものは、ゼロのキイワードで呼び出しが可能です。」
…まずは、手当たり次第に刈って、このデスサイスの威力を確かめたいところだが。
・・・いきなりそこら辺の一般人を刈るのはまずい。現代において防犯カメラや人の目は各所にあふれている。無双する前に面倒なことになるのはごめんだ。姿を消して狩りをするにしても、その元凶となる存在・・・犯人が必要だ。
そのためにはまず、この世界を混沌に陥れる必要がある。
突如現れた、強大な敵。
無差別に命を奪う、無慈悲の象徴。
パニックを呼び、多少の違和感を吹き飛ばす、強引な存在。
「パイ、今日から世界が変わるぞ?…現代日本に、ファンタジーワールドが殴り込みだ。」
「楽しそうね。期待しかできないわ。」
パイが俺を見上げて笑う。
いい顔するじゃねえか。俺のパートナーにぴったりだよ。
「ゼロ」
0100101000100101
100100101100110
0100010101110闇と炎を纏った0100010
010100010011000010010111001
101 11000
0101翼0011010
01
1110101000101010
0竜101001100010
110101000101010100100010101010111
101000すべてを焼き尽くす10000
111010010001000011000010010101011101
0001
0100100000010100110100100100
00恐怖1010010
0001000000101001010010110010
10咆哮010
11001100001001011111010100010
1100
100101100110010
10010その名は1100
100010101000101001
110 ケーオス=ディソーダー 010
01001100010101
1000 C=D 10
0000001
0110000100101
00010
1 010
1111011101010
0と1を体に纏わせた、漆黒の竜が現れた。
こいつは俺が書いた小説の中で無敵の存在だった竜だ。闇の中から生まれ、光を食らい、命を消滅させる命なき永久の存在。勇者も賢者も世界を救う英雄もすべてその存在をこいつに消された。俺の書いた破滅の物語は、こいつがすべてを食らい尽くすところで突如終了する。そのラストに誰もが恐れ戦いたのさ。
「かっこいい。ずいぶん小さいね、大きくする?」
「ばかか。部屋の中ででっかくなれるわけねえだろ。外ででっかくなるんだよ。」
漆黒の竜は紅の目を光らせ、俺の言葉を待っている。物語の中であれほど無双して世界を食らい尽くし暴虐の極みを見せた竜がおとなしいもんだ。所詮俺の中の産物は俺には逆らえないということか。哀れなもんだ。
「ケーオス。お前は今から食らい尽くせるものを食らい続けろ。今あるものを破壊しろ。世界を混沌に貶める、それがお前の生まれた意味だ。」
「・・・すべてを食らい尽くして・・・破壊すれば…いいのだな?」
俺の目をまっすぐ見つめて、言葉を返すケーオス。言葉を吐くたびに、口から闇が漏れ出している。あの闇は人を狂わせる。深すぎる闇が人格を破壊してしまうのだ。破壊された人間は、人を憎み、恨み、妬んで発狂するしかない。俺には効かねえけど。
小説の中で十万人都市を三日で破滅させた究極の闇だ。どんな聖女も賢者もみんなトチ狂って殺し合うのが実にキモチが良くて、気が付いたら20000文字も書いていたんだよな。
「一気に焼け野原にするな。目立つ建物を派手に破壊しながら程よく人間を怖がらせつつ、ここぞという場面でこれ見よがしに食らうんだ。」
ケーオスの力ならば、一瞬にしてこの地球上の表面を無機質な地表へと変えることが可能だ。だが、それでは意味がない。人々を恐怖のどん底に陥れなければ、救いのない世界に震える姿を見て笑ってやらなければ男が廃るってね。強面のイキリ野郎のチビる姿を見て大笑いしながら飲む酒は相当うまそうだ。
「お前は俺の自作自演のキードラゴンなんだ。お前は俺を引き立てるための重要な駒、それを忘れるな。」
「・・・私はお前と・・・闘う事になると・・・いうのか?」
ケーオスの吐き出す闇が、俺のデスサイスの闇に食われている。闇が闇を食らって揺らめいている。鎌の輝きが増していく。
このデスサイスは、ケーオスの闇を喰らう事ができる…唯一の存在。死神の鎌を一億本圧縮して、たった一本の尊き存在となった、世界最強の…武器。ケーオスが人化し友好を深めた勇者に送った代物だ。ま、せっかくのプレゼントを使いこなす間もなく勇者は死んじまったわけだが。
「俺はいずれお前と敵対するが、それは単なる演出。…派手にやらかそうぜ?お前の攻撃は俺には効かない。俺の攻撃は効くけどな。…また再生してやる、大袈裟に満身創痍を装えよ?」
「ずいぶん・・・身勝手な話だが・・・私はそれを受け入れるしか・・・ないようだ。」
「0を纏えば、人の目に映ることはない。ここからはゼロを纏って姿を消して出ていくんだ。人の多い場所でゼロを振り払って派手に登場した後、破壊を開始しろ。俺に退治されるまで、無双するんだ、いいな。」
「…心得・・・・た…。」
00000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
0000000000000000000000000000000000000
00000000000000000000000000
00000000000「では」0000000
0000000000000000000000000000000000
000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
000000000000000
0000「また」0000
0000000000000000
0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
0000000000000000
00「いずれ」000000000
0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
000 0000
00000000000000
0000 0000
000000000000000
00000
000000000000
00000 00000
00
00000000
ケーオスは0を纏って姿を消した。
今から世界中に恐怖が撒き散らされる。まずは日本からだ。この国を制圧し、俺の本拠地とし、世界各国を潰す。
…ああ、とはいえ、各国から目をつけられるのもめんどくせえな。先に他の国を全部潰すか?
「パイは他の国を潰すことをどう考える?」
「他の国を潰すのは一日でできるから。どうせミサイルひとつ打ち込むのにも会議が必要なんでしょう、問題ないと思う。」
そうだな。いざとなったらケーオスをコピーして各国に送り込めば一瞬ですべてが終わる。俺は日本語しかわからないからな、日本語の話せないやつらはみんな消せばいい。どうせ言ってることは何一つ理解できないんだ、生かしておく必要はない。