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こっちの世界の超能力は異世界でも最強でした  作者: ナナシノナガレヤマ
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アリッサ・テレシアナ

 アリッサに剣を突き付けられたまま、俺は今後の身の振り方を考えていた。

 騎士団っていうのはつまりあっちの世界でいう警察みたいなものだろう。ここで抵抗してしまったら、もしこの場を切り抜けられたとしても、今後お尋ね者になってしまう。

 彼女の言う粛清というのがどの程度のものか知らないが、場合によってはおとなしくしていた方がいいのかもしれない。

 聞いてみよう。


「ちなみに粛清っていうのは」

「この場で死んでもらうって意味だ」

「おぅふ」


 選択肢消えた! 入り口ぶち破ったくらいで過激すぎでは?


「本来……ギルドの入り口ぶち壊した程度なら、二、三日牢屋に入れとくぐらいで済ましてやれるんだけどなぁ。でも今回はそうはいかねえ」

「な、なぜ?」

「お前、オークを狩ったらしいな?」


 噂が広まるのは早いなぁ。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 ソフィアが割って入ってくる。


「魔物の討伐はむしろ称えられるべき事柄なはずです! それがなんで死罪に繋がるんですか!」

「そうだそうだ! もっと俺を褒めろ!」

「ヤゴは黙ってて」

「はい」


 しかしよく考えたら本当にそうだ。オークが強い魔物とされているなら、むしろ減刑の処置があってもいいのではないか。

 そう考えていると、アリッサはクククと笑い始めた。


「おいおい、アタシは死罪だなんて一言も言ってねえぜ?」

「で、でもさっき死んでもらうって!」

「いいか、アタシがこれから行うのはあくまで粛清だ。ちょっとおふざけの過ぎる冒険者に灸を据える行為。騎士団員に認められた立派な権利さ。その結果、不慮の事故によってそこの男は死ぬ。それだけだ」

「そんな……横暴です! こちらは抵抗もしていません! 罪を償わせたいのならこのまま連行すればいいはず! なんであなたが直接手を下すんですか!」


 黙って聞いていたが、確かにソフィアの言う通りだった。なんで俺はこの場で裁かれなければならないのだろうか。

 次の瞬間、アリッサの口から信じられない言葉が飛び出した。


「決まってんだろ。アタシがそいつと戦いてえからだよ!」

「めっちゃ私情!」


 思わずツッコミを入れてしまった。俺その理由で殺されんの?


「何をわけのわからないことを言ってるんですか! あなた騎士でしょ? 私的に民衆を裁かないでください!」

「しょうがねえだろ! 聞けばその男、オークの死体を一人で引きずりながら、ここまで運んできたっていうじゃねえか! 並大抵の腕力じゃねえ……一回やり合ってみてえんだ! 頼む!」

「なんで私がお願いされる立場になってるの? ヤゴからもなんとか言って!」


 なんとか言ってと言われましても。しかしこいつ本当にこれで隊長なのか? 他の人達は今のこの状況、どう思ってるんだ?

 アリッサの後ろに立つ他の騎士達の方へと視線を送ってみた。皆、一様に目を逸らした。この反応を察するに、どうかと思ってはいるが逆らえないらしい。

 まあしかし、


「いいよ。やろうぜ」

「ヤ、ヤゴ!」


 逆に今のこれはチャンスだ。もっとも、ソフィアはどうしてもやめさせたいようだったが。


「そうこなくっちゃな!」

「ただし条件がある」

「あん?」

「俺が勝ったら一切のお咎め無しだ。ギルドの扉をぶち破った事……なかった事にしてもらう!」


 図々しい要求かもしれないが、こっちだって命が掛かっている。これくらいの見返りがなければやってられない。


「いいぜ」


 アリッサはそう言うとニヤリと笑った。


「お前が勝ったら、今回の事はアタシが責任を持って全て揉み消してやろう!」

「要求しといてなんだが、騎士の風上にも置けねえなあんた」


 だが、俺はそういうやつが嫌いじゃない。ちょっとワクワクしてきた。


 ※


 場所を広い空地に移し、俺とアリッサはそこの中央で剣を突き付け合う。

 アリッサの隊の隊員達がその周囲に、俺達二人をぐるりと覆い隠すように立っていた。他の騎士隊の人間や、一般人に見られるとまずいからだ。

 そんな中に唯一紛れこんだ一般人、ソフィア。彼女は今にも泣きそうな面持ちでこちらの様子を窺っている。


「ここにコインがある。こいつが地面に落ちた瞬間、スタートだ。用意はいいか?」

「ああ、問題な……いや、ちょっと待った」

「ああん? なんだ? 怖気づいたか?」


 俺は抜いていた剣を鞘に納め、ソフィアの所に。


「ソフィア、これ持っててくれ」

「え? でも、ヤゴ武器は?」

「こんなんで切りかかったら勝負にならないだろ」


 剣をソフィアに渡し、近くにいた騎士の剣の柄に手を掛ける。


「悪い、これ借りる」

「なっ! おい貴様、何を……」


 その騎士は抗議の声を上げようとしていたが、すぐに大人しくなった。アリッサが『なんでもいいからさっさとしろ』と言わんばかりにこちらを睨みつけていたからだ。周囲の騎士達もその気迫に圧されているようだった。


「じゃあさっそく」

 

 始めようか。そう口にしようとした時には既に、アリッサはコインを弾いていた。

 気が早い。俺は能力をセットし、剣を構えた。

 コインが落ちる。そしてそれと同時、


「《炎獄剣》」


 アリッサの剣から高くまで火柱が上がる。推定五メートル。遠くの方で通行人のどよめく声も聞こえてきている。

 これ、誰が戦ってるか一発でわかっちゃうんじゃないのか? 騎士達に隠させた意味……。


「行くぜ。ちょっとは楽しませろよ? なぁおい!」

「は? おい待てよ」


 アリッサがその剣先を俺の方に向けると、一度は収束しかけた火柱が再び伸びてきた。これぐらいなら簡単に避けれそうだが、俺はその場から動けない。

 なぜなら位置関係的に俺の真後ろにソフィアがいる。周りの騎士達は鎧に身を包んでいるが、彼女は軽装だ。これが直撃したら火傷で済まされないんじゃないか。


「やってくれやがった。くそっ」


 悪態を吐きながら、俺は炎に飲まれた。


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