第9話 聖なる泉
ふと目が覚めた時、視界に映ったのは今にも泣き出しそうな程顔を歪めた2人だった。
「《大精霊様!》」
2人は目を覚ました私を見て同時に声を上げた。
あれ?私、何してたんだっけ…
気を失う前の記憶を廻るが、良く思い出せない。
「大精霊様!大丈夫ですか!?気分はどうです!?」
《大丈夫なのか!?何処も痛いとこないか!?》
2人共、心底心配そうに言うものだから、私はそんなに大変な事をしてしまったのかと不安になってくる。
『大、丈夫…だよ。心配掛けて、ごめんね』
そう言うと安心したのか、2人はほっと息を付いた。
その様子を見て、本当に心配してくれたんだって分かって、嬉しさで自然と笑顔になる。
それを見て2人はまたぽっと赤くなったのだけど、私の顔に何か付いているのだろうか?
っと、それよりも何が起きたのか聞き出さないと。
私は赤くなって固まっている2人に声を掛けた。
2人に話を聞いて思い出した。
そうだ、あの荒野で強く誓った時、唐突に頭に浮かんだ"歌"を歌ったのだ。
その後、初めて大量の魔力を制御、そして消費した事が原因で気を失ってしまったんだと思う。
多分、初めての事で身体が付いて行けなかったんじゃないかな?
今度からは気を付けないと、また2人に心配掛けちゃうね……
2人にあんな顔して欲しくないし……
目を覚ました時の、2人の泣きそうな顔が思い浮かぶ。
思い出すだけで悲しい気持ちになってきたので、頭をふるふると横に振って考えていた事を振り払う。
『そうだ、あの荒野は……?』
荒野を見ようと周りを見回した時、視界に広がった光景に息を呑んだ。
そこには━━荒野が広がっていたその場所には━━光を浴びてきらきらと輝く澄んだ泉が出来ていた。
泉の周囲には沢山の緑が溢れ、様々な色の花が咲き誇っている。
その神秘的な光景に目を奪われていた私はこれが"歌"の力だという事を思い出す。
『━━これが、神様から、授かった力…?』
私の問に応える様に、リューイは言う。
「はい、その力を使ってこの世界を守る為に、貴女は生まれたのです」
━━━守る、為に。
この時私は、自らの強大過ぎる力を絶対に悪用せず、この美しい世界を守り続ける事をここに誓った。