第4話 妖精王と竜王
彼女の眼前に現れた2つの光はそれぞれ形を成した。
1つは人の様な形をした、1対の羽を持つ者━━妖精━━
1つは丸みを帯びた腹、スラリとした首、頭部に生えた小さな2つの角、大きな蝙蝠に似た羽を持つ者━━竜━━
その2つの『命』は今、ここに降り立った。
彼女は突然現れた見たこともない不思議な者達を呆然と見つめていた。
目を覚まして以来━━この世界に生まれて以来━━木々や草花以外の『命』を見たことがなかった彼女は、どういった反応をすればいいか全く分からなかった……それと同時に、未だにきらきらと光り輝くそれを見て『嗚呼、なんて美しいのだろうか』と言葉を失っていたのである。
と、そんな時だった。
それら━━妖精と竜━━がゆっくりとその瞳を開けた。
「……うぅん……ふあぁ…」
「……きゅぅ……きゅあぁ…」
2人は同時に大きな欠伸を漏らし、眠そうに目を擦っている。
そのぴったりな仕草に、彼女は思わずクスリと笑みを零した。
突然ハッと同時に顔をあげた2人に驚き、彼女は咄嗟に後ろへ飛び退き、近くにあった木に隠れた。
その時あっと声が聞こえた気がしたが、初めての事に驚きが大き過ぎて彼女には反応する余裕はなかった。
木の影からそっと顔だけ出して見ると、こちらをじっと見ている2人の姿が見えて再び驚いて反射的に隠れてしまった。
久方振りに会話出来るかも知れないという期待と、これまで会話をして来れなかった事からの不安が入り乱れ、彼女はどうすればいいのか分からなくなってしまった。
果てには木の影から出ることすらも躊躇ってしまい、その場に座り込んですぐ、
「あの…」
ビクッと肩を揺らした彼女の隣には先ほどの妖精が。
その反対側……妖精と挟む様に竜が。
彼女はもう逃げ場がないと言った風に縮こまってしまう。
「━━っ!ぼ、僕達は貴女に危害を加えようとしてる訳ではありませんから!だから、その…安心して下さい」
幼い所為かまだ高めの声であたふたとそう言う彼を見ていると、確かに危害を加えようとしている様には見えない。
そう思うと、自然と身体から力が抜け、緊張が解れた。
それを見てホッとしたのか、彼は続ける。
「まずは自己紹介からですね。僕は"妖精王"のリューイといいます。宜しくお願いしますね。"神の愛娘"、大精霊様」
彼はそう言いいながらゆったりした動きで腰を折り、彼女━━大精霊━━へ微笑みかけた。