第2話 逃れられない孤独
私が自分の使命を自覚したあの日から既に1000年近い年月が経過していた。
細かくは覚えていない。200年を過ぎた頃から、面倒になって数えるのを止めてしまった。
私は生まれてからずっと、従順に使命だけを全うしてきた。
お蔭でこの世界は沢山の緑で溢れ、様々な果実や花が育つ様になった。
けれど……
こんなに待ったのに……
私は1人………
寂しいよ…………
遂に孤独に耐えられなくなった精神が悲鳴をあげた。
涙がぽろぽろと溢れては地面を濡らしていく。
誰か……助けて………
助けて…………
内に秘める膨大な魔力がグラリと崩れる感覚があった。
あっと思った時には既に遅く、崩れ落ちた感情に影響した魔力が暴走を始めた。
視界がグニャリと歪む。
暴走を始めた魔力は濃く、空中に飛散する事無く蠢く闇の様に触れた木々を枯らしていった。
このままでは森が消えてしまうと、必死になって主導権を取り戻そうとするも上手くいかない。
そして広がった魔力はあの場所…彼女が灯した一番目の木が……
あの木だけは枯らしたくない…彼女は強くそう思った。
世界にたった1人という孤独の中で、『声』が聞こえたあの時が……それに促されて灯したあの木が……彼女にとってたった1つの支えだったのだ。
それさえも失ってしまえば、彼女の精神は完全に崩壊してしまうだろう。
それが分かっているからこそ、止めなければならない。それなのに、意思に反して魔力はどんどん広がっていく。
嗚呼、このままでは……
誰か……助けて………
そう強く願った時だった。
神はこれまで1人、孤独に耐え続けた彼女を見離すことなく、祝福を捧げた。