第19話 アリシアと亜紀沙
━━━やっと、思い出したんだね。
私に掛けられた声は、とても懐かしくて、同時に胸が締め付けられる。
後ろを振り返ると、そこには"私"がいた。
……うん、思い出したよ。ずっと孤独にしてごめんね、亜紀沙。
私がそう言うと、亜紀沙はゆっくりと顔を横に振る。
━━━私こそ、貴女を孤独にしてしまってごめんなさい。長い、長い道のりだったね。
本当にそうだったなと思う。
私が亜紀沙だったのだと思い出すまで、1000年も掛かってしまったのだから。
でも、もうずっと一緒だ。
もう、孤独ではないのだ。
安心したからか、先程とは違う涙が零れ落ちた。
━━━ふふっ、生まれ変わっても、私は泣き虫なのね。
そうみたい。
そう言って、2人は笑う。
━━━さぁ、もうお行きなさい。私と違って貴女には、待ってる人がいるのでしょう?
………うん、そうだね。
━━━さようなら、"アリシア"
………さよなら、"亜紀沙"
瞬間、
目の前で笑っていた"彼女"は霞の様に消え去り、次第に世界も黒に染まっていった。
瞳を開けた私の視界に入ったのは、真っ直ぐ天井へと掲げられた自分の真白な手と、溢れんばかりの涙を浮かべて顔を覗かせている2人だった。
私はどうやら、眠りにつきながら泣いていたらしい。
「アリシア…?」
そう、優しく私の名を呼んでくれる彼の声は震えている。
「リューイ、グレン」
久し振りに聞いた自分の声は、鈴の音の様で、すぐ壊れてしまいそう。
私が"普通に"喋った事に驚いたのか、2人は目を見開いていた。
「心配掛けてごめんね。もう、大丈夫だよ」
2人は堪えていた涙を流した。