第18話 長い夢の終わり
━━━誰か…助けて……
そう強く思った時だった━━━
薄暗かった世界がふわっと明るくなり、同時に全てのスクリーンが消えた。
そして、新しいスクリーンが…
『━━━亜紀沙』
瞬間、彼女の思考は静止した。
『━━━亜紀沙』
再び名を呼ばれた時には頬を涙が伝っていた。
………
スクリーンの中の彼は言う。
『━━━好きだ。お前が好きだ』
涙は留まる事を知らないかの様に只々流れ続けた。
………………と
…………ると
……遥斗
やっと言えた大切な人の名前は暖かくて…苦しくなった。
………合いたい。遥斗に合いたいよぅ…
再び、新しいスクリーンが現れる。
何処かの街の、普段通りで変わらぬ風景。
そこで私は遥斗と並んで歩いている。
ふと、長い歩道を渡ろうとしている子供の姿が目に入った。
その時は何故…?と思ったけれど、今にしてみればあれは偶然ではなかったのかも知れない。
その子供の渡ろうとしている場所へ、信号無視をしたトラックが……
それを見た瞬間、不思議と私の身体は動いていた。
運動神経が鈍い癖にこの時良く動けたな、とどうでもいい事を考える。
先程までは泣いていた筈なのに感情が消えたかの様な感覚だった。
私は小さな子供の背を勢い良く押して向こう側へと突き飛ばした。
……トラックはもう、すぐそこまで迫っていた。
全てがスローになって、走馬灯の様なものが見えたのを覚えている。
そんな時だった。
━━━私を抱き締める者がいた……
後ろからぎゅっと、力強く……
耳元で彼はこう囁いた。
『━━━亜紀沙は俺が守る』
そこで、プツンとスクリーンは電源が切れた様に暗くなった。
━━━そうだ、"全て"思い出した。