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第15話 美味しいね

今回も大精霊さんは泣き虫です笑

 うぅん……ふぁあ……


 大きな欠伸を1つして、しょぼしょぼする目を擦っていると、



「ふふっ、おはよう御座います、アリシア」



『……っ!……お、おはよ』



 どうやら大きく口を開けて欠伸していたところを間近で見られてたみたい。


 うぅ…は、恥ずかしい……


 羞恥心で顔を真っ赤にさせているとリューイがクスクスと笑う。



『〜〜〜!』


 声にならない声をあげてぼふっと敷き詰められた落ち葉に顔を埋める。



 そんな時、



《リューイー採ってきたぞー》


 グレンの少し気だるげそうな声が聞こえて、顔をあげる。



《おっ!アリシアおはよー!》


『おはよ、グレン』


《はい、これ!》



 グレンへ挨拶を返すと、口に咥えて運んできた籠の様なものを差し出してくる。



『……?』


 訳が分からず首を傾げている私に、リューイが説明してくれる。



「果物ですよ。グレンに頼んで採ってきて貰ったんです」


『……?何、するの?』


《何って、食べるしかないだろ?》


『……??』



 "食べる"とは何だろうか。



「食べると言うのは、こういった果物等を口で噛んで飲み込む事を言うんですよ」


《そうそう!こうやってな》



 そう言って2人は籠の中に入っていた赤い小さな果物を手に取り、口に入れた。



《〜〜〜!うめぇ!》


「はい、甘酸っぱくて美味しいです」



 2人がとっても嬉しそうに言うものだから、私もやってみたくなってきた。



 ゆっくりと籠の中の赤い果物を掴んだ━━筈だったのだが、身体は果物をすり抜けてしまった。


 本当は分かっていた。

 自分が"実体のない存在"なのだと。

 グレンの様にそこに身体が存在しないということに。


 だけど、自分と同じく実体のないリューイがやってのけたのだから自分にも出来るのではないかと、淡い期待があったのだ。



 どうして━━っと思ってしまう。



 私はこの世界に"存在している様で存在いない"


 それが改めて思い知られて、とてつもなく悲しかった。




 と、ひやっと冷たい何かが私の手に触れた。


 ━━━え?



 それは、リューイの白い手で……



 彼は優しく微笑みながら私の手を掴み、その上にそっと赤い果物を乗せた。



「さぁ、食べてみて下さい。美味しいですよ」



 訳が分からないまま私は果物を口に運んだ。



 噛み締めると、ぷちっと音がして何かが口の中いっぱいに広がっていく。



『…………』



 始めて食べた筈なのに、それはとても懐かしくて……



 胸が苦しくなって……



 よく分からない感情が要り乱れる。




 気付いた時には、私は再び涙を流していた。

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