サイカイⅩ~衝撃~
頷いた湯川さんは素直にトコトコと去って行った。そうして一対一になった途端、忍者が口を開く。
「率直に言わせてもらう。一緒に忍者を倒してくれ」
「忍者を倒せ!!?」
どいうこと...だよ、お前も忍者じゃじゃないか。それに俺を殺そうとしてただろ。あの悪役ぶりはどこにいったんだよ!おかしいとは思うのだが何度見てもあいつの目は真面目そのもので、先の声も真摯さが篭っていた。
俺が質問しようと口を開こうとすると何を言おうとしたのか判ったのか、手で制して忍者は言った。
「確かに演技とはいえ攻撃やあんなことを言った私が頼むのは筋違いです。それはわかってます、でも!!!」
俺は遮る様に言う。
「それはいいんだ。ただ何故、忍者のお前が忍者を倒すのを依頼するんだ??」
「そ、それはだな。忍者は国家転覆計画を遂行しようとしてる。それに君は強い。君なら出来る!」
「忍者たちが国家転覆計画か....」
『忍者』というのは君主に仕えて君主の命令を遂行する忠実な暗殺者だったはずだ。それに相模との会話で今仕えているのが国家だというのはハッキリしている。疑問に答えてくれた。
「確かに奴が来るまでは誇り高き忍者だったのだ。それなのに来てからは私欲に溺れる奴が後を絶たず、それに、貫き通した高潔な忍者はそういった連中に消されていった。今、行動を起こそうと思っているのは私くらいだろう」
「......奴っていうのはどんな奴だ?」
「突然現れて、心の隙間に漬け込み、国家転覆計画の支持者を増やしている卑しい奴だ。性別は女でグラマラス、整った顔立ちをしているな。名前は一族の苗字に麻耶と名乗っている。確かに忍術は使えるが確実に奴は我が一族ではない」
「なにか理由があるのか?」
「忍術を呼び出す為の印の結び方が僅かに違うのだ」
「そうなのか....要するに妖艶な美女で、忍術が使える忍者以外か」
「それに何故か奴が忍術を使っても結界から知らせが来なかった」
「なるほどな」
ここから鑑みるにその女を倒せば計画は倒れそうだな。そしてその女は一族の人間か国家の上層部か紫藤家に連なる者の可能性大だ。
国家の上層部は甘い汁を吸っているだろうし可能性は低い、一族の人間である可能性も低い、紫藤家に連なる者のと考えるのが妥当か。ここから導ける方針としては地道に計画に関わっている奴から情報を聞き出すか紫藤家を調べるかだな。
前者はバレる可能性が非常に高いので後者にしよう。
「ということで良いか?」
「わかった。忍びの得意分野だ。それで行こう」
情報戦が始まることとなった。