平和な戦場XXI~異常な家ⅩVI~
天才研究者っていうのはオシャレとかそういうのには無頓着なイメージがあるがそんなことは無いらしい。もしかしたら俺よりもオシャレかもしれない。
「そう。やっぱり大人になったんだし、そういうのには気を使わないと」
大人になったという言葉とは裏腹にまるで活発な少女の様な声が向こうから伝わってきた。向こうを見ると声を発したと思わしきグラマーでスタイル抜群の女性が居た。あれは誰だろう?
「奥様。こちらがお嬢様のご学友でございます」
どうやらこの人が湯川さんの母らしい。とても湯川さんを生んだ一児の母と思えないような若々しさだ。
若々しさを保つためには女子力をたくさん持っていることが重要らしいが、母とは違い若作りをしているわけではなくメイクはしていない。
怪しい薬品でも飲んで若返りを果たしたのだろうか?本当に高校生にしか見えない。
「ふーん?沙理名。なかなかいい男を捕まえてきたみたいね」
「別に彼氏ではない」
「そう?なかなかいい男だから、この人ならお母さん良いよ」
「そんなに?」
「頭がいいのは当然として、やさしいし、強いし、こういう進んだ世界を見ても拒否しないし否定しない。ただ、だからトラブルに巻き込まれやすいんだけど。まあ、それを助けるのが女ってもんでしょ!」
「そう」
女子高生が友達と会話しているみたいだなと眺めていたら、俺の性格から実力、不幸なことまで見抜かれたんだけど。勘がいいとかいう次元を越えてないか?これが名探偵というやつなのか。恐ろしい。
そしてなぜかあんなにも男子にとっては眼福なスタイルなのにさっきからまったく色気がないんだ。人妻は色気があるというのを聞いたことがあるがあれは嘘なのか。
「ジロジロ見て。駄目だよ君。私の体は透君のものなんだから。そんなに見たいならうちの娘のを見たら?」
「す、すみません」
「そういう目で見るのはダメだから」
「別にそういう目で見たわけでもそういう目で見ようともしていないからな」
「まあ、娘を末永く宜しく」
「スルーですか、それにさりげなく湯川さんを僕の嫁にしようとしないでください」
「まあまあ」
湯川さんの母はそう言ったあと耳元でささやいた。
「でも、うちの沙理名はきっと今後必要になるよ」